THE PADDLER 湘南で自分らしく人生を切り拓いてゆく男たちを紹介

THE PADDLER | 053 Mr.Shinsuke Kawajiri ALMOST COMPANY代表
河尻 晋介さん | 鎌倉

湘南には、自分らしく人生を切り拓くために漕ぎ出す男たち=THE PADDLERがいる。
彼らを突き動かすもの、そして、視線の先にあるものは?
INPUTとOUTPUTという二つのワードから、その行動を探る。

Photo: Yumi Saito  Text: Paddler

INPUT
「綺麗事かもですが、仕事をするうえで大切にしていることに『三方よし』というのが基本にあります」

「おととい、立山から帰ってきたんですよ」

5月の終わりの昼下がり、冬のシーズンを締めくくるスノー・トリップから戻ったばかりの河尻晋介さんを鎌倉の自宅に訪ねた。

「19歳の時に白馬でスノーボードに出会って以来、ずっと滑ってますね。ライダーをしていた頃は、日本の冬が終われば、アメリカのマウント・フッドやニュージーランドに滞在して、とにかく1年中滑り続けていました」

フリースタイルスノーボーダーとして活躍した後に、パタゴニアに勤務、その後にカリフォルニア発のスノーボードウェア・ブランド「DUB BRAND」の日本支部を任され、さらにサンディエゴ発のアイウェア・ブランド「SPY」でも日本における事業部を統括するなどを経て、2017年に自身の会社「ALMOST COMPANY」を立ち上げた。すると、それまで培ってきたマーケティング、ブランディング業務のほかにも、映像制作やカリフォルニアのサングラス・ブランド「NOTHING&COMPANY」の輸入代理を行うなど、河尻さんの仕事は多岐に渡る。

マーケティング業を主軸にしている河尻さんの仕事に、1990年にスタートしたスノーボード・ブランド「GENTEMSTICK」とタイヤブランド「TOYO TIRES」をマッチングさせたプロジェクトがある。90年代からサーフィンとスノーボードの融合を常に意識したもの作りをし、現在のスノーサーフィンの火付け役でもある玉井太朗氏の世界観と、ウィンタータイヤの技術革新を進める「TOYO TIRES」との世界を繋げ、ウィンタースポーツのビジョンをさらに広げている。「GENTEMSTICK」のファンには、「GENTEMSTICK×TOYOTIRES」のショートムービーをチェックした人も多いのではないだろうか。

「綺麗事かもですが、仕事をするうえで大切にしていることに『三方よし』というのが基本にあります。クライアントや関わる人が楽しく仕事に取り組め、結果もついてくる仕事にしたいと考えています」

河尻さんの活動のベースはやはり自然のフィールドにある。そして、雪山に長く関わってきたからこその仕事も多い。2年前から動き始めたビーガン対応のインスタントラーメンである「MYRAMEN」のプロジェクトも、長くカナダや北米のスノーシーンで活躍してきたフォトグラファーのDICE-K MARU(丸山大介)とともに手がけている。↙︎

OUTPUT
「山と海の両方があるといいんです。そのためにも海は気楽にいけるオフの場所にしておきたい」

大阪生まれ、奈良で育ち暮らしていた河尻さんが湘南に移住したのは15年ほど前だった。

「何か一緒にものづくりしようかな、と考えた時に一緒にやりたいなと思う人が関東に多かったんです。東京に住むという選択肢はなかったので、湘南に絞って移住先を探していましたね。最初に住んだのは藤沢。正直、はじめの1か月ぐらいはずっとサーフィンしてましたね。でも、それじゃまずいなって我に返って、仕事を始めましたよ(笑)」

藤沢、辻堂と移動し、5年ほど前に現在の鎌倉・腰越に家を建て、鎌倉を拠点にして全国の雪山へと向かう日々を送る。河尻さんにとって雪山は仕事の場でもあり、インスピレーションを得る場でもあるのだろう。そして何より19歳でスノーボードに出会ってから雪山に通い続けるのは、雪山が好きで、大切な存在なのだろう。

「皆そうだと思いますが、波も雪もいい時を狙いたいですよね。でも、当然自然相手だからこっちの都合にはならないんですよね。いい雪が降る、その時にその場に行ける時間を持っておかないといけないと思って生きています。そのためには曜日感覚で生きていてはいられないということがあります」

ひとりで何役もの多くの仕事をこなす河尻さんだが、ひとりだからこそ自分の時間を自然のリズムに合わせることができるし、それはとても重要なことなのだ。1年の半分ほどを雪山に向かい、北海道、東北、信越と雪を追うようにして日本全国を旅して戻ってくる鎌倉。海にも親しんで暮らしているが、雪山と同じような関わり方ではないという。↙︎
「自分はなんですが、山はエネルギーをもらうというか受けるというか、逆に海は解放するというか、すごく対局な存在です。でもどちらも大自然なのでやりすぎは危ない場所にもなります(笑)例えば白馬の山などはせせりたつ険しい山並みなので、人によっては圧迫感を感じますよね。自分にとっては山と海の両方があるといいんです。山では本業として過ごすことが多く、割と体力を使い切る場合が多いので、海では自分なりのペースで過ごしたい。そのためにも海は気楽にいけるオフの場所にしておきたいんですよね。最近サーフィンはサボり気味ですが(笑)」

河尻さんの湘南での暮らしは、エネルギーを解放してリラックスできる場所としての存在でもあり、湘南エリアに暮らすクリエイターとの仕事や、ポップアップを行うなど、仕事のアウトプットの場にもなっているようだ。

「湘南という土地は、自分らしさというか自然体で仕事も遊びもできる場所。同じような感性で共感できる人がいる土地でもありますね。刺激ももらえるし、刺激を出し合っているようで力も抜けている、バランス感覚に優れた町で、そういう人が集まってきている気がします」

THE PADDLER PROFILE

河尻晋介

ALMOST COMPANY代表
20代からフリースタイルスノーボーダーとして活躍し、現在は企業やブランドのマーケティング、ブランディングのほか、プロダクトの輸入代理や映像製作なども行う。

-ALMOST COMPANY-
instagram
-NOTHING&COMPANY.JP-
instagram
WEBSITE