THE PADDLER 湘南で自分らしく人生を切り拓いてゆく男たちを紹介
THE PADDLER | 015
Mr.Masamitsu Shimada
島田 雅光さん
湘南レーベル代表|藤沢
INPUT
「湘南で育ったからこそ、今のビジネスが生まれた」
湘南発のドレスダウンカルチャー
開放的なオープンスペースに、アメリカのヴィンテージキャンピングカー「エアストリーム」や東南アジアの三輪タクシー「トゥクトゥク」が無造作に止まっている。ウッドの壁際にある卓球台では、海外からのツーリストのカップルが、ビールを飲みながらピンポンを楽しんでいる。
何ともユニークで自由な雰囲気が漂う空間だ。次々と大きなスーツケースを引いた宿泊者たちがフロントに立ち寄って行く。看板を目にしなければ、ここがホテルだと気づく人は少ないだろう。2011年のオープン以来、口コミで評判が広がり、今では湘南屈指の人気ホテルとなった「8HOTEL(エイトホテル)」。人気の理由は、藤沢駅から徒歩数分という利便性はもとより、ホテルの個性にある。客室は地元や海外のアーティストの作品で彩られ、階下のラウンジではみんな飲み物を片手に思い思いに会話を楽しんでいる。時にはミュージシャンのライブやパーティが開催されることも。他のホテルにはない肩肘張らない楽しげな雰囲気に包まれている。
「8HOTEL」をスタートさせたのは「湘南レーベル」代表の島田雅光さんだ。起業当時は弱冠26歳、以後、ホテル業の他にも、シェアハウスやレンタルギャラリー、さらにサーフィンと農業をリンクさせた分譲住宅などのプロジェクトなどを精力的に展開。オリジナリティあふれる多彩な事業で、多方面から注目を集めている。
さて、どんなやり手のビジネスマンかと少しばかり恐々としていたところ、取材スタッフの前に現れたのは、Tシャツにコットンパンツというカジュアルなスタイルの人物だった。ナチュラルでどこか肩肘の力が抜けた物腰。小学5年生からの藤沢育ち、湘南的なリラックス感が親しみやすい。
「もともとは古いクルマやバイクが好きで、中古車屋さんで働いていたんですよ。特にフォード・マスタングが好きで、ずっと65年製のモデルがほしかったんです。ただ収入を考えたら。いつ買えるの? というのがあって。で、お金をもっと稼げる仕事をやりたいと考えていた時に、たまたま不動産会社の求人広告を雑誌で目にして応募しました。お金が貯まったら、クルマ屋をやればいい、と。だから、不動産屋をやりたいと思っていたわけではないんです」
その後、異なる業種形態の不動産会社2社で経験を積み、26歳で「湘南レーベル」を起業し、ホテルをオープンさせた。
「やはり、子どものころから育った地元で、湘南に関する会社をつくりたかったんです」
初めて手がけた「RIGNA FUJISAWA」は、中長期滞在するツーリストをターゲットにした「ウィークリーホテル」。ハワイのコンドミニアムのような新しい形態の宿泊施設だった。当時、藤沢エリアには観光客のニーズに応えるホテルがなく、その目新しいコンセプトは話題を呼んだ。現在は手放してしまったが、今につながる湘南のツーリズムの需要を見越した先見性が、その後の8HOTELを誕生させたのだ。島田さんの斬新で柔軟なアイデアは、どこから生まれてくるのだろうか?
「やはり湘南で育ったことが大きいですね。もし僕が東京で育ったとしたら、ホテルをつくるにしても、もっとドレスアップしたきっちりしたものになったと思うんです。湘南はドレスダウンのカルチャー、“ゆるさ”というか脱力感がある。幸いここで育った僕自身もそう。また、人もすごく温かみがあって、コミュニティもあり、そういうカルチャーに触れられたのはすごくプラスでした。人格形成上もそうだし、ビジネス上においてもすごく恵まれたと思います」↙︎
開放的なオープンスペースに、アメリカのヴィンテージキャンピングカー「エアストリーム」や東南アジアの三輪タクシー「トゥクトゥク」が無造作に止まっている。ウッドの壁際にある卓球台では、海外からのツーリストのカップルが、ビールを飲みながらピンポンを楽しんでいる。
何ともユニークで自由な雰囲気が漂う空間だ。次々と大きなスーツケースを引いた宿泊者たちがフロントに立ち寄って行く。看板を目にしなければ、ここがホテルだと気づく人は少ないだろう。2011年のオープン以来、口コミで評判が広がり、今では湘南屈指の人気ホテルとなった「8HOTEL(エイトホテル)」。人気の理由は、藤沢駅から徒歩数分という利便性はもとより、ホテルの個性にある。客室は地元や海外のアーティストの作品で彩られ、階下のラウンジではみんな飲み物を片手に思い思いに会話を楽しんでいる。時にはミュージシャンのライブやパーティが開催されることも。他のホテルにはない肩肘張らない楽しげな雰囲気に包まれている。
「8HOTEL」をスタートさせたのは「湘南レーベル」代表の島田雅光さんだ。起業当時は弱冠26歳、以後、ホテル業の他にも、シェアハウスやレンタルギャラリー、さらにサーフィンと農業をリンクさせた分譲住宅などのプロジェクトなどを精力的に展開。オリジナリティあふれる多彩な事業で、多方面から注目を集めている。
さて、どんなやり手のビジネスマンかと少しばかり恐々としていたところ、取材スタッフの前に現れたのは、Tシャツにコットンパンツというカジュアルなスタイルの人物だった。ナチュラルでどこか肩肘の力が抜けた物腰。小学5年生からの藤沢育ち、湘南的なリラックス感が親しみやすい。
「もともとは古いクルマやバイクが好きで、中古車屋さんで働いていたんですよ。特にフォード・マスタングが好きで、ずっと65年製のモデルがほしかったんです。ただ収入を考えたら。いつ買えるの? というのがあって。で、お金をもっと稼げる仕事をやりたいと考えていた時に、たまたま不動産会社の求人広告を雑誌で目にして応募しました。お金が貯まったら、クルマ屋をやればいい、と。だから、不動産屋をやりたいと思っていたわけではないんです」
その後、異なる業種形態の不動産会社2社で経験を積み、26歳で「湘南レーベル」を起業し、ホテルをオープンさせた。
「やはり、子どものころから育った地元で、湘南に関する会社をつくりたかったんです」
初めて手がけた「RIGNA FUJISAWA」は、中長期滞在するツーリストをターゲットにした「ウィークリーホテル」。ハワイのコンドミニアムのような新しい形態の宿泊施設だった。当時、藤沢エリアには観光客のニーズに応えるホテルがなく、その目新しいコンセプトは話題を呼んだ。現在は手放してしまったが、今につながる湘南のツーリズムの需要を見越した先見性が、その後の8HOTELを誕生させたのだ。島田さんの斬新で柔軟なアイデアは、どこから生まれてくるのだろうか?
「やはり湘南で育ったことが大きいですね。もし僕が東京で育ったとしたら、ホテルをつくるにしても、もっとドレスアップしたきっちりしたものになったと思うんです。湘南はドレスダウンのカルチャー、“ゆるさ”というか脱力感がある。幸いここで育った僕自身もそう。また、人もすごく温かみがあって、コミュニティもあり、そういうカルチャーに触れられたのはすごくプラスでした。人格形成上もそうだし、ビジネス上においてもすごく恵まれたと思います」↙︎
OUTPUT
「湘南ならではの“暮し”をつくりたい」
「僕は自分の仕事を不動産業ともホテル業とも思っていないんです。『湘南レーベル』を始めときに会社名に『湘南』と入れたように、湘南のライフスタイルをつくろうというのがそもそものコンセプトだったんです。ライフスタイルにかかわるものが、事業の軸です」
まず島田さんが手がけたのは、湘南に興味がある観光客が滞在するためのホテル。そして、湘南を訪れてこの土地に住みたいと思った若者のために、シェアハウスを。当然暮らすためには仕事が必要となるから、職業の斡旋サービスも。一見、多様なプロジェクトだが、その根底には、湘南でのライフスタイル、つまり“暮らし”をつくるという大きな目的でリンクしているのだ。
そこに宿っているのは、地元への思いはもちろん、湘南のポテンシャルへの期待感だ。旅行が好きで年の半分を海外で過ごすという島田さん。だからこそ、グローバルな視点で湘南を俯瞰(ふかん)できる。
「すごく恵まれた土地だと思います。都市部があって海があって、この二つが両立している。アメリカだったら、ロサンゼルスとサンタモニカやマリブのような関係ですね。日本国内では、湘南以上に都市との密接な関係もありながら、自然や独自のカルチャーを持っている場所はまずないなと思います。だから、いろんなものが上手く表現されていけると思います。もっと世界的にも注目される場所になれるはずです」
“Think Globally, Act Locally”
湘南レーベルが創業当時から掲げている社是の一つだ。「地球規模で考え、地元から行動せよ」という環境や社会学で語られる言葉だが、島田さんの行動理念にピタリと当てはまる。
「海外に滞在しているときは、いろんなものにアンテナを張るようにしています。そこから得た情報やアイデアを湘南で生かすことはできないかと。ですが、ただ“コピー・アンド・ペースト”しても意味がありません。湘南でいろんな人と出会いながら、そこで構築していくことがすごく大切です。今、湘南はただ訪れるだけでもおもしろくはなってますが、いろんな体験が重なったときに、その鮮やかさがより増すと思うんですね。そういうことをもっともっとやっていきたいです」
実は、島田さんは、後2年で今の事業から引退しようと計画している。湘南レーベルは次の世代に引き渡して、自分は新しいプロジェクトを手がける予定だ。
「僕は人生を何回かやりたいと思っているんです。1回目の人生で『湘南レーベル』をつくった。次の人生でもう一度、新しい何かをつくりたいんです」
湘南で育んだ“ゆるさ”で、軽やかに自分の人生を歩む島田さん。だが、その足跡からは、湘南の新しいライフスタイルが萌芽(ほうが)している。
まず島田さんが手がけたのは、湘南に興味がある観光客が滞在するためのホテル。そして、湘南を訪れてこの土地に住みたいと思った若者のために、シェアハウスを。当然暮らすためには仕事が必要となるから、職業の斡旋サービスも。一見、多様なプロジェクトだが、その根底には、湘南でのライフスタイル、つまり“暮らし”をつくるという大きな目的でリンクしているのだ。
そこに宿っているのは、地元への思いはもちろん、湘南のポテンシャルへの期待感だ。旅行が好きで年の半分を海外で過ごすという島田さん。だからこそ、グローバルな視点で湘南を俯瞰(ふかん)できる。
「すごく恵まれた土地だと思います。都市部があって海があって、この二つが両立している。アメリカだったら、ロサンゼルスとサンタモニカやマリブのような関係ですね。日本国内では、湘南以上に都市との密接な関係もありながら、自然や独自のカルチャーを持っている場所はまずないなと思います。だから、いろんなものが上手く表現されていけると思います。もっと世界的にも注目される場所になれるはずです」
“Think Globally, Act Locally”
湘南レーベルが創業当時から掲げている社是の一つだ。「地球規模で考え、地元から行動せよ」という環境や社会学で語られる言葉だが、島田さんの行動理念にピタリと当てはまる。
「海外に滞在しているときは、いろんなものにアンテナを張るようにしています。そこから得た情報やアイデアを湘南で生かすことはできないかと。ですが、ただ“コピー・アンド・ペースト”しても意味がありません。湘南でいろんな人と出会いながら、そこで構築していくことがすごく大切です。今、湘南はただ訪れるだけでもおもしろくはなってますが、いろんな体験が重なったときに、その鮮やかさがより増すと思うんですね。そういうことをもっともっとやっていきたいです」
実は、島田さんは、後2年で今の事業から引退しようと計画している。湘南レーベルは次の世代に引き渡して、自分は新しいプロジェクトを手がける予定だ。
「僕は人生を何回かやりたいと思っているんです。1回目の人生で『湘南レーベル』をつくった。次の人生でもう一度、新しい何かをつくりたいんです」
湘南で育んだ“ゆるさ”で、軽やかに自分の人生を歩む島田さん。だが、その足跡からは、湘南の新しいライフスタイルが萌芽(ほうが)している。
THE PADDLER PROFILE
島田雅光
1980生まれ。小学5年生から藤沢市で育つ。2007年に湘南レーベル株式会社を設立。「8HOTEL」をはじめシェアハウスプロジェクト「SUNNYSIDE INN」、稲村ヶ崎にレンタルハウス&レンタルスペース「SIMPLE HOUSE」、さらにサーフィンと農業をテーマにした分譲住宅プロジェクトなどを展開。ユニークで多彩な事業が、注目を集めている。