PADDLER’S EYE 湘南の今を独自取材した特集と連載

FEATURE PICK UP PEOPLE 04【後編】
by TAYLOR STITCH
江部寿貴さん
新しい価値観を創造・共有できる雑誌づくりを目指して

昨年、日本初上陸を果たし、鎌倉に海外初の旗艦店を構えたテイラー スティッチ。
2008年にサンフランシスコで3人の若者が創業した新しいアパレルブランドだが、
あくまでも本物にこだわる物づくりの姿勢から、口うるさい西海岸のファッションフリークから高い評価を受けている。
そんな物づくりに情熱を燃やすテイラー ティッチが、さまざまなフィールドから同じ志を抱く人物をインタビュー。
4人目は、雑誌『OCEANS(オーシャンズ)』の副編集長として活躍する江部寿貴さん。

>> 江部寿貴さん【前編】はこちらから

Photos : Taisuke Yokoyama  Text : Paddler

お気にりの「テレグラフジャケット」を着て、クライアントとの打ち合わせへ向かう江部さん
雑誌づくりもサーフィンも答えがないから楽しい

--前回は江部さんのお仕事についてお聞きしましたが、今回はプライベートについてお話をしていただきたく。好きなファッションスタイルはありますか?

東京生まれなので、東京らしい普通のファッションが好きですね。あまり目立たない本当に普通の服。今のトレンドであるロゴが大きくドンッと入っているような服にはあまり袖を通しません。『オーシャンズ』そしてサーフィンと再び向き合うようになって、そういう嗜好がより強くなりました。

--江部さんのライフスタイルには、サーフィンが大きな比重を占めているようですね。

はい。ですが一時期、海から離れていたんですよ。『オーシャンズ』の編集部を辞めてしまい仕事もプライベートも上手くいかず、体も調子悪くて、サーフィンも億劫(おっくう)になってしまい……。そんな自分が腐っていた時に、何か思いついたように太田編集長に連絡したんですよ。編集長もサーフィンをしていたので、「海に連れて行って下さいよ」と。それで海に行ったら、「やっぱり楽しい。いい遊びだな」と。編集長と話しているうちに、また『オーシャンズ』をつくりたいという気持ちになりました。ですから、不思議と自分にとってサーフィンと『オーシャンズ』はシンクロしているんです。学生のころは平日も行ってましたけど、今はなかなか厳しい。でも、実は今朝行ってきたんですけどね、こっそりと(笑)。

--ちなみに、これからの人生の夢は「いい雑誌をつくる。いい波に乗る」とのことですね。

仕事、家族、サーフィンを高い次元でいろいろできるかなと、自分の中でちょっと意地になっているというか。もちろん、サーフィンに関しては、高い次元といっても別にプロのように上手いわけではありません。ですが、忙しいというのが理由で海に行かないというのは簡単なことです。だから、時間をつくってできるだけサーフィンをするようにしたい。雑誌づくりもサーフィンと一緒で、多分答えがないんですよ。↙︎
「『テレグラフジャケット』がいいのは、ストレッチ素材なので着ていて楽なこと。服でストレスを感じるほど、嫌なことはないですらね」
「東京生まれなので東京らしい、普通のファッションが好きです。テイラー スティッチもそんな服ですね」
--雑誌づくりには答えがない?

ないからこそ、いい雑誌をつくりたいと思ってないとだめなのかなと思います。もちろん雑誌の一つの使命として、読者がちゃんといいて、なるべく多くの方に届いてほしいなと思ってますし。よく自分たちのことをバンドで例えるんです。ライブハウスで前衛的な音楽をやっていて、「俺たちの音楽をわかってねえじゃん、世の中は!」と吠えてるのだけはやめよう、と。ローリングストーンズや日本だったらサザンオールスターズとか、音楽のプロが聴いても「あの人たちは一流だよね」と評価してくれるバンドを目指そうと。読者というかオーディエンスが世界中にいる。日本中の人が歌を口ずさめる。そういう聴く人、読む人がついてきてくれるような雑誌をつくりたい。同業者の人にも「あいつら、ちゃんとしたことをやってるよね」と。ファッションでもクルマでもサーフィンでも、何でもそうです。

例えばハードコアなサーフィンの専門誌をつくる人から「『オーシャンズ』って、なんかサーフィンのことをチャラチャラやってるよね」と思われてもいいんです。だけど、「でもあいつら、わかってやってるよね」というふうに言われたい。やはり雑誌づくりもサーフィンも、答えがわからないから、楽しいんでしょうね。チューブに入りたいなと思いながら死んでいくんじゃないかなと思います(笑)

--テイラー スティッチについてお聞かせ下さい。ファッション誌の編集者というプロの目から見て、どのような印象を持っていますか?

ひと言で表現するとハイスタンダードですね。先ほども言った自分のファッション感に近い。スタンダードとは、いつも身近にあるもの。何かとりわけ主張をするわけでもなく、いつ着ても飽きない。だけど、特別な素材であったり、つくりであったり、そういうこだわりが感じられるので、ハイスタンダードかなと。本当におもしろいブランドだと思います。こういうことを本国でやってしまう人もおもしろいし、日本でこれをやろうとしている人もおもしろいなと思う。鎌倉・七里ガ浜に店を出したというのも、すごくシンボリック。鎌倉は、東京の人たちもビジターとしてもサーフィンに行きます。田舎でもないし都会でもなく、カルチャーが入り交じっていますからね。

--お気に入りのアイテムはありますか?

「トリブレンドT」は、生地感とサイジングがすばらしいですね。主張のないベーシックなものを、クオリティ高くつくる、まさにハイスタンダードを象徴していると思います。「デモクラティックチノ」はシルエットがいいですね。それと「テレグラフジャケット」ですね。僕はこれまで、いろいろとクロージングのページをつくってきたんですが、テイラー スティッチはサヴィル・ロウとかイタリアのスーツとは違う文法の中にあると思います。スーツに詳しい人、要するにスーツオタクから見たら、どこまで評価するかはわからない。でも街と自然をシームレスに行き来して楽しんでいるような人には最高じゃないかと。実にテイラー ステッチらしいアイテムですね。

--今後、テイラー スティッチに望むことはありますか?

不思議とテイラー スティッチは、着ている男がみなアクティブで格好いい人生を送っているように思える。ずっと、そんな男のための服であってほしいです。ちょっとほめすぎですかね(笑)。
目標にあるのはメジャーな雑誌づくり。だが、その道のプロからも認められるようなコンテンツをつくるのが信条
「トリブレンドT」と「ヴァンズ」のスニーカーを合わせてカジュアルに。ストリートもよく似合う

TAYLOR STITCHとは?

2008年、サンフランシスコで3人の若者によってスタートしたアパレルブランド。3人ともサーフィンやスケートボード、フライフィッシングやバイクなどを楽しみ、街とフィールド、シームレスに着ることができる服づくりをコンセプトにしている。あくことなく本物を追求する姿勢は、職人気質そのもの。服好きにとってはこたえられない“こだわり”が満載している。2017年に、海外店舗の1号店として、七里ヶ浜にコンセプトショップがオープン。ラインナップをチェックできるのは、日本では鎌倉店のみ。ぜひ、チェックを!

TAYLOR STITCH 鎌倉店
神奈川県鎌倉市七里ガ浜1-1-1 [ MAP ]
TEL. 0120-776-560
OPEN. 10:00 ~ 19:00 

→[Taylor Stitch(テイラースティッチ)]WEBサイトはこちらから→

PROFILE

江部 寿貴

『OCEANS』副編集長
1977年生まれ。東京都出身。早稲田大学卒業後、世界文化社入社。『Men's Ex』編集部、『Men's Ex』編集部勤務の後『OCEANS』創刊にかかわる。2010年より現職。2児の父としての顔も持つ。