PADDLER’S EYE 湘南の今を独自取材した特集と連載
PADDLER'S GALLERY 丸 倫徳さん
その場、その時に
大学生の休みは長い。長い休みを有意義に過ごすため、突如バックパックの旅を思いついたのが20歳のこと。母親が「深夜特急みたいなことをすれば」と助言してくれたこともあり、とにかくバックパックのハブと言われているバンコクを目指し、一ヶ月のマレー半島の旅に出た。帰国してから街の変化と違和感を感じた丸さんは、自分の中での旅を続けるべく様々なカルチャーの人たちが集まる藤沢・辻堂の海の家sputnikや葉山・秋谷オルタナティヴスペースsolayaに出入りした。そこでは湘南に居住しながらも、色々な価値観を持つ人々と出会うことができたそうだ。
アーティストはなんでもできなければいけないと思っていた丸さんは、大学で油画科の立体クラスを専攻していたことと持ち前の器用さでsputnikの解体作業を手伝うようになり、大工仕事を覚えていった。大学時代FRP(合成樹脂複合材料)などを使って作品を制作していた丸さんだが、卒業してからは平面を中心に描いてきた。ただ、その平面作品はサイトスペシフィック(その土地で制作することの意義を内包させなら、展示される場所の特性をも活かすこと)な制作が多い。大学卒業後ライブペインティングという言葉がまだ一般的でなかったころから、様々な場所でライブペイントに挑んできた。そのうち日本全国のライブペインター達と交流がはじまり、彼らと組んで遠征もした。美術のメインストリームから離れて活動していたが、2009年アメリカバーモント州のバーモントスタジオセンターでアーティスト・イン・レジデンスを経験する。アトリエを持たず、場所を選ばず作品を手がける姿勢は、後に彼の制作スタイルとなっていく。
昨年7月、インドネシアジョグジャカルタでグループ展を開催した丸さんの作品は従来とは印象を変えていた。ギャラリーの場所柄から生まれる特性を活かし、作品自体にズレを直接描き込むわけでなく、自然光を使い、ギャラリーの木の階段に影の作品が描かれていた。それはまさにその場でしか味わえないサイトスペシフィックかつ人が日常で気づくことのできる時間のズレを作品として可視化されたものだ。
湘南そして徳島
丸さんは現在、東京・渋谷にこの2月にオープンする国内初となる徳島県のオーベルジュ型アンテナショップの壁面を彩っている。旅以外に地元を離れたことなかった彼は、日本の首都圏でないところから角度を変えて社会を見つめ直してみたかったという理由で近年湘南と徳島県を行き来している。
約630kmという距離を移動することで、時間軸だったり物理的だったり常に多様なズレに身を置き、それらを作品に反映させているのだろう。
見るものの目を惹く華やかな丸さんの作品は、ズレという良い違和感を感じさせ様々な事象に気づく思考を持たせてくれる。
「カリブの島に行ってみたい」
次は一体どのようなズレを見せてくれるのだろうか、彼の旅に終わりはない。
大学生の休みは長い。長い休みを有意義に過ごすため、突如バックパックの旅を思いついたのが20歳のこと。母親が「深夜特急みたいなことをすれば」と助言してくれたこともあり、とにかくバックパックのハブと言われているバンコクを目指し、一ヶ月のマレー半島の旅に出た。帰国してから街の変化と違和感を感じた丸さんは、自分の中での旅を続けるべく様々なカルチャーの人たちが集まる藤沢・辻堂の海の家sputnikや葉山・秋谷オルタナティヴスペースsolayaに出入りした。そこでは湘南に居住しながらも、色々な価値観を持つ人々と出会うことができたそうだ。
アーティストはなんでもできなければいけないと思っていた丸さんは、大学で油画科の立体クラスを専攻していたことと持ち前の器用さでsputnikの解体作業を手伝うようになり、大工仕事を覚えていった。大学時代FRP(合成樹脂複合材料)などを使って作品を制作していた丸さんだが、卒業してからは平面を中心に描いてきた。ただ、その平面作品はサイトスペシフィック(その土地で制作することの意義を内包させなら、展示される場所の特性をも活かすこと)な制作が多い。大学卒業後ライブペインティングという言葉がまだ一般的でなかったころから、様々な場所でライブペイントに挑んできた。そのうち日本全国のライブペインター達と交流がはじまり、彼らと組んで遠征もした。美術のメインストリームから離れて活動していたが、2009年アメリカバーモント州のバーモントスタジオセンターでアーティスト・イン・レジデンスを経験する。アトリエを持たず、場所を選ばず作品を手がける姿勢は、後に彼の制作スタイルとなっていく。
昨年7月、インドネシアジョグジャカルタでグループ展を開催した丸さんの作品は従来とは印象を変えていた。ギャラリーの場所柄から生まれる特性を活かし、作品自体にズレを直接描き込むわけでなく、自然光を使い、ギャラリーの木の階段に影の作品が描かれていた。それはまさにその場でしか味わえないサイトスペシフィックかつ人が日常で気づくことのできる時間のズレを作品として可視化されたものだ。
湘南そして徳島
丸さんは現在、東京・渋谷にこの2月にオープンする国内初となる徳島県のオーベルジュ型アンテナショップの壁面を彩っている。旅以外に地元を離れたことなかった彼は、日本の首都圏でないところから角度を変えて社会を見つめ直してみたかったという理由で近年湘南と徳島県を行き来している。
約630kmという距離を移動することで、時間軸だったり物理的だったり常に多様なズレに身を置き、それらを作品に反映させているのだろう。
見るものの目を惹く華やかな丸さんの作品は、ズレという良い違和感を感じさせ様々な事象に気づく思考を持たせてくれる。
「カリブの島に行ってみたい」
次は一体どのようなズレを見せてくれるのだろうか、彼の旅に終わりはない。