PADDLER’S EYE 湘南の今を独自取材した特集と連載

PADDLER'S GALLERY 劇画家・エルド吉水さん
茅ヶ崎市に居をかまえるエルド吉水さんは、長年、現代アート、パブリックアートと日本のアートシーンの最先端で活躍してきた。しかし、2010年、突如「劇画家・エルド吉水」として活動を始めた。それから7年、今、エルド吉水の名はヨーロッパを席巻し始めている。
現代アートの限界、劇画の可能性
著作『龍子』は、横浜に拠点をもつヤクザの組長の娘・龍子と彼女を取り巻く人々がそれぞれの正義のために懸命に生きる物語である。舞台は日本だけにとどまらず、世界各地の裏社会にわたる。ハードボイルド映画さながらのアクションシーンは細部までこだわり、見るものを飽きさせることがない。「大きな嘘はつくけど、小さな嘘はつかない」を主義とする吉水さん。物語のあらすじは現実離れしていても、ファッションや乗り物、様々な武器に至るまでその細部はリアルだ。また物語に登場する風景の取材も抜かりない。湘南の風景がところどころ散りばめられているのは、地元に暮らすローカルにとっての楽しみの一つだろう。
吉水さんのこだわりは、作品を全て手で描いているということだ。近年、漫画を描く作家のほとんどはコンピューターを使ったデジタル作品が多いが、吉水さんは手描きの原画にこだわり続けている。その理由は、劇画を描き始めた由縁につながる。
吉水さんは東京藝術大学彫刻専攻を修了し、現代アートの世界へ飛び込んだ。都心のギャラリー、美術館でのグループ展、海外での国際展に参加するなど活躍していたなか、パブリックアートの仕事を得る。その制作過程のほとんどはPC上で構成され、肉筆で制作することが少なかったという。また作品を通して人とコミュニケーションをとることもあまりなかった。元々映画が好きだったエルドは自身で壮大な物語を作りたいと思い描くようになった。「物語を作りたい」、「人間模様を描きたい」、「作品を通して人とコミュニケーションを築きたい」、そんな思いが彼に筆をとらせた。
湘南から世界へ発信
2016年、『龍子』がフランス語に翻訳、出版されると、エルド吉水さんは瞬く間にフランスで注目され始める。フランスの日刊紙リベラシオンにて紹介された他、新幹線TGVのための作品が駅の外壁一面に展示されるなど、その活躍は目覚ましい。8月には『龍子』イタリア語版が出版され、秋以降ドイツ語翻訳も予定されている。
その『龍子』も目下ラストシーンを執筆中。部屋にはラストシーンを描くに相応しい荘厳な音楽が流れ、明るい湘南の雰囲気とは一線を画す。ただ、幼少期から湘南で育った吉水さんにとって海の近くにいることは重要だと言う。劇画を描くには長時間机に向かい、自然光も遮断して執筆する。そんな疲れた体には自宅から海までの散歩がちょうど良いと微笑む。吉水さんは、これからも茅ヶ崎の秘密基地から世界へ物語を発信し続ける。
現代アートの限界、劇画の可能性
著作『龍子』は、横浜に拠点をもつヤクザの組長の娘・龍子と彼女を取り巻く人々がそれぞれの正義のために懸命に生きる物語である。舞台は日本だけにとどまらず、世界各地の裏社会にわたる。ハードボイルド映画さながらのアクションシーンは細部までこだわり、見るものを飽きさせることがない。「大きな嘘はつくけど、小さな嘘はつかない」を主義とする吉水さん。物語のあらすじは現実離れしていても、ファッションや乗り物、様々な武器に至るまでその細部はリアルだ。また物語に登場する風景の取材も抜かりない。湘南の風景がところどころ散りばめられているのは、地元に暮らすローカルにとっての楽しみの一つだろう。
吉水さんのこだわりは、作品を全て手で描いているということだ。近年、漫画を描く作家のほとんどはコンピューターを使ったデジタル作品が多いが、吉水さんは手描きの原画にこだわり続けている。その理由は、劇画を描き始めた由縁につながる。
吉水さんは東京藝術大学彫刻専攻を修了し、現代アートの世界へ飛び込んだ。都心のギャラリー、美術館でのグループ展、海外での国際展に参加するなど活躍していたなか、パブリックアートの仕事を得る。その制作過程のほとんどはPC上で構成され、肉筆で制作することが少なかったという。また作品を通して人とコミュニケーションをとることもあまりなかった。元々映画が好きだったエルドは自身で壮大な物語を作りたいと思い描くようになった。「物語を作りたい」、「人間模様を描きたい」、「作品を通して人とコミュニケーションを築きたい」、そんな思いが彼に筆をとらせた。
湘南から世界へ発信
2016年、『龍子』がフランス語に翻訳、出版されると、エルド吉水さんは瞬く間にフランスで注目され始める。フランスの日刊紙リベラシオンにて紹介された他、新幹線TGVのための作品が駅の外壁一面に展示されるなど、その活躍は目覚ましい。8月には『龍子』イタリア語版が出版され、秋以降ドイツ語翻訳も予定されている。
その『龍子』も目下ラストシーンを執筆中。部屋にはラストシーンを描くに相応しい荘厳な音楽が流れ、明るい湘南の雰囲気とは一線を画す。ただ、幼少期から湘南で育った吉水さんにとって海の近くにいることは重要だと言う。劇画を描くには長時間机に向かい、自然光も遮断して執筆する。そんな疲れた体には自宅から海までの散歩がちょうど良いと微笑む。吉水さんは、これからも茅ヶ崎の秘密基地から世界へ物語を発信し続ける。

飾り棚に作品の資料や趣味のフィギア、お気に入りの作品などが所狭しと置かれている




アトリエにはモティーフにするためのモデルガンや参考にする雑誌、吉水さんの趣味がうかがえる物であふれ『龍子』の世界が現実に溢れる

尊敬する漫画家は手塚治虫、松本零士、池上遼一、楳図かずお…。「けど、やっぱり手塚治虫先生かな」(吉水)