THE PADDLER 湘南で自分らしく人生を切り拓いてゆく男たちを紹介
THE PADDLER | 047
Mr. Kazunori Fukuda
「エンジョイワークス」代表
福田和則さん|鎌倉
INPUT
「こんな居心地がいい『まち』はない。みんなでつくりたい」
「みんなで一緒にまちをつくりたい」---- そんな大きな思いを胸に抱いて活動をする男が鎌倉にいる。「エンジョイワークス」の代表を務める福田和則さんだ。
手がけるフィールドは多岐に渡る。不動産の仲介や分譲、古民家のリノベーション、商業店舗の開発、シェアハウスやゲストハウス、カフェの経営、空き家の再生、ファンドの運営などなど。シームレスに活躍しているように感じるが、その根底に共通するのは福田さんの思いだ。
「湘南は主体的に、この『まち』で生きている人が多いと思います。例えば『こういう暮らしがしたい』とか『こういう環境にいたい』とか、積極的に選んでいる。だからこそ、『まち』に対しても、自分たちができるいろいろな活動で貢献する人たちが多い。結果として、人と人とのつながりが生み出されて、いわゆるソーシャル・キャピタル*注 がすごく溜まる。僕もそういう『まちづくり』に関わりたいと思っているんです」
2006年、福田さんは、子どもができたことをきっかけに葉山に移住してきた。それまで都心で暮らしていたが、帰宅するのは夜の9時、10時が日常だった。そんな時間に小学生が塾から帰るのを、日々目の当たりにしていた。聞くところによると、その地域のほとんどの小学生にとってはそれが当たり前のことだった。その姿に福田さんは疑問を抱いた。
「湘南で子育てする方が、子どもの選択肢が多いなと思ったんです。いろんな大人がいるじゃないですか。プロサーファー、アーティスト、写真家、もちろんサラリーマンも。いろんな種類の大人に接して、いろんなことを教われば、自分で好きなことを見つられるんじゃないかと」
そして、実際に湘南で生活をしてみて、あることに気づく。
「『居心地の良さ』ですね。サーフィンでも何でもいいですが、フラッと出会って、何となく友だちになってつながる緩やかに水平型のコミュニティがある。一方で葉山なんかでは子ども会のような昔からの垂直型のコミュニティもある。その両者が存在していて、更にはそれらが交わっている。そういう状況が、さっき言ったソーシャル・キャピタルが溜まりやすく、居心地のいい『まち』につながっている」↙︎
*注:人々の協調行動を活発にすることによって、社会の効率性を高めることのできる、「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織の特徴。 物的資本 (Physical Capital) や人的資本 (Human Capital) などと並ぶ新しい概念。(厚生労働省)
手がけるフィールドは多岐に渡る。不動産の仲介や分譲、古民家のリノベーション、商業店舗の開発、シェアハウスやゲストハウス、カフェの経営、空き家の再生、ファンドの運営などなど。シームレスに活躍しているように感じるが、その根底に共通するのは福田さんの思いだ。
「湘南は主体的に、この『まち』で生きている人が多いと思います。例えば『こういう暮らしがしたい』とか『こういう環境にいたい』とか、積極的に選んでいる。だからこそ、『まち』に対しても、自分たちができるいろいろな活動で貢献する人たちが多い。結果として、人と人とのつながりが生み出されて、いわゆるソーシャル・キャピタル*注 がすごく溜まる。僕もそういう『まちづくり』に関わりたいと思っているんです」
2006年、福田さんは、子どもができたことをきっかけに葉山に移住してきた。それまで都心で暮らしていたが、帰宅するのは夜の9時、10時が日常だった。そんな時間に小学生が塾から帰るのを、日々目の当たりにしていた。聞くところによると、その地域のほとんどの小学生にとってはそれが当たり前のことだった。その姿に福田さんは疑問を抱いた。
「湘南で子育てする方が、子どもの選択肢が多いなと思ったんです。いろんな大人がいるじゃないですか。プロサーファー、アーティスト、写真家、もちろんサラリーマンも。いろんな種類の大人に接して、いろんなことを教われば、自分で好きなことを見つられるんじゃないかと」
そして、実際に湘南で生活をしてみて、あることに気づく。
「『居心地の良さ』ですね。サーフィンでも何でもいいですが、フラッと出会って、何となく友だちになってつながる緩やかに水平型のコミュニティがある。一方で葉山なんかでは子ども会のような昔からの垂直型のコミュニティもある。その両者が存在していて、更にはそれらが交わっている。そういう状況が、さっき言ったソーシャル・キャピタルが溜まりやすく、居心地のいい『まち』につながっている」↙︎
*注:人々の協調行動を活発にすることによって、社会の効率性を高めることのできる、「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織の特徴。 物的資本 (Physical Capital) や人的資本 (Human Capital) などと並ぶ新しい概念。(厚生労働省)
人と人をつなげて、まちをつくる
それまで外資系金融会社で働いていた福田さん。その職種はプライベートバンカーという富裕層の資産運用に携わる仕事だった。
「何十、何百億という資産を保有する資産家が相手。個人的な相談にのることも多いです。絵がほしい、子どもを留学させたい、ヘリコプターを購入したい……。みんな欲しいものは手に入るんですけど、人間関係で問題を抱えている人も少なくない。金がすべてではない。人とのつながりの大切さに気づきました」
その二つの気づきが相まって、福田さんは会社を辞め、2007年に「エンジョイワークス」を起業した。人とつながることから生まれるコミュニティ。ビジネスではあるが、それが居心地のいい「まちづくり」につながれば。
「『不動産を仲介する』行為は、ある意味『友だちをつくる』行為につながります。『家をつくる』という行為も、その『まち』におけるストックになります。例えば『家を買いたい』という人には、『では、家を売る』という関係ではなくて、これから『まちづくり』を一緒にやってくれる仲間として接します。その人に『まちづくり』の視点を持ってもらう仕掛けもします。例えば、住みたい家の模型をつくってもらったり。主体的になってもらうことで、視点が上がるんですよ」
ゲストハウスやカフェの運営をやってみたい。そういう人たちには、これまで得た経験を共有する。資金が必要ならば、参加型のクラウドファンディングで賛同者の協力を募り、みんなで経営に携わる。空き家を活用したいという人たちには再生の手伝いをする。
「僕にとって、『理想のまち』とは人とのつながりを感じることができて、『幸せだな』と思える場所。湘南はそんな『まち』ですから、みんなでつくっていきたいです」↙︎
「何十、何百億という資産を保有する資産家が相手。個人的な相談にのることも多いです。絵がほしい、子どもを留学させたい、ヘリコプターを購入したい……。みんな欲しいものは手に入るんですけど、人間関係で問題を抱えている人も少なくない。金がすべてではない。人とのつながりの大切さに気づきました」
その二つの気づきが相まって、福田さんは会社を辞め、2007年に「エンジョイワークス」を起業した。人とつながることから生まれるコミュニティ。ビジネスではあるが、それが居心地のいい「まちづくり」につながれば。
「『不動産を仲介する』行為は、ある意味『友だちをつくる』行為につながります。『家をつくる』という行為も、その『まち』におけるストックになります。例えば『家を買いたい』という人には、『では、家を売る』という関係ではなくて、これから『まちづくり』を一緒にやってくれる仲間として接します。その人に『まちづくり』の視点を持ってもらう仕掛けもします。例えば、住みたい家の模型をつくってもらったり。主体的になってもらうことで、視点が上がるんですよ」
ゲストハウスやカフェの運営をやってみたい。そういう人たちには、これまで得た経験を共有する。資金が必要ならば、参加型のクラウドファンディングで賛同者の協力を募り、みんなで経営に携わる。空き家を活用したいという人たちには再生の手伝いをする。
「僕にとって、『理想のまち』とは人とのつながりを感じることができて、『幸せだな』と思える場所。湘南はそんな『まち』ですから、みんなでつくっていきたいです」↙︎
OUTPUT
「幸せになれる『まち』を日本中に」
現在、福田さんの活動は湘南の外にも広がっている。鎌倉をベースにした活動が「まちづくり」の成功事例として評価され、さまざまな地方自治体や関係団体から、勉強会や講演の声がかかっているのだ。
「ここでの『まちづくり』は、一つのモデルになりえると思っています。『すごく良い感じだな』ということを一つずつ紐解いて、『こういうアプローチで『まちづくり』をやってみたら上手くやれるかも』という実験の場所として、すごく大切だと思います。ここで得たものを別の『まち』に生かせればいい。そういう実験を進める上で、湘南はすごくやりやすい場所です」
福田さんが地方に行って、相談を受けるのは「まちづくり」をしようにも土地に魅力がないという地元の悩みだ。観光資源がない、目玉がない。これといった特色がない……。
「そんなことはないんですよ。どんな『まち』にも魅力はあります。住み慣れている人たちには目が届かないんでしょうね」
福田さんならではの観点から土地の魅力を伝えると、地元の人たちは驚嘆することもある。東京から湘南を俯瞰そして肌で感じてきた福田さんならではの視点がそこには生きている。
「特に地方には空き家が沢山あって、地域活性が求められている。そんな場所は日本中にいっぱいあります。そのようなコミュ二ティの空き家の再生をこれまでの経験を生かして、全国に広げることを、今、一生懸命やっているという感じです」
湘南で暮らして感じた「幸せ」。自分と同じような人を、日本中にもっと増やしたい。そんな思いがそこにはある。
「ここでの『まちづくり』は、一つのモデルになりえると思っています。『すごく良い感じだな』ということを一つずつ紐解いて、『こういうアプローチで『まちづくり』をやってみたら上手くやれるかも』という実験の場所として、すごく大切だと思います。ここで得たものを別の『まち』に生かせればいい。そういう実験を進める上で、湘南はすごくやりやすい場所です」
福田さんが地方に行って、相談を受けるのは「まちづくり」をしようにも土地に魅力がないという地元の悩みだ。観光資源がない、目玉がない。これといった特色がない……。
「そんなことはないんですよ。どんな『まち』にも魅力はあります。住み慣れている人たちには目が届かないんでしょうね」
福田さんならではの観点から土地の魅力を伝えると、地元の人たちは驚嘆することもある。東京から湘南を俯瞰そして肌で感じてきた福田さんならではの視点がそこには生きている。
「特に地方には空き家が沢山あって、地域活性が求められている。そんな場所は日本中にいっぱいあります。そのようなコミュ二ティの空き家の再生をこれまでの経験を生かして、全国に広げることを、今、一生懸命やっているという感じです」
湘南で暮らして感じた「幸せ」。自分と同じような人を、日本中にもっと増やしたい。そんな思いがそこにはある。
THE PADDLER PROFILE
福田和則
1974年兵庫県生まれ。外資系金融会社でキャリアを積む、2006年に東京から葉山へ移住。 2007年にエンジョイワークスを創業し、不動産仲介業をスタート。当初は都内にオフィスを構えるが、 2011年より鎌倉・由比ガ浜へ移転。現在はカフェ、シェアハウスの運営、空き家の再生プロデュースなど、コミュニティづくり、まちづくりに専心している。