THE PADDLER 湘南で自分らしく人生を切り拓いてゆく男たちを紹介
THE PADDLER | 009
Mr.Mitsuyuki Shibata
芝田 満之さん
写真家|葉山
好きなものにはとことん打ち込む
湘南をベースに、ファッション、広告、エディトリアル、映画と多岐にわたり活躍を続ける写真家、芝田満之さん。サーフィン、フライフィッシング、クライミング、自転車などを嗜む趣味人でもある。時間の余裕ができれば、のんびり過ごすよりも趣味の世界に没頭してしまう。好きなものには、とことんハマりやすい性格。どの趣味にも、深くのめり込んでいる。
ここ数年、精を出しているのはフライフィッシング。「北海道へよく行きます。それ以外の場所にも行きたいけど、仕事にならなくなるから封印しています」と笑うが、定期的に北海道を訪れているだけでも趣味性としては充分に高いだろう。そもそもはブラッド・ピットが出演していたフライフィッシング映画『リバー・ランズ・スルー・イット』を観て憧れ、そのロケ地の川にすぐに行ってしまったことがきっかけらしい。
「映画を観て、アメリカのモンタナ州まで飛んで行きましたね。現地のスクールで習って、一投目で釣れちゃったんですよ。ビギナーズラックですね」
興味を持ったらやってみないと気が済まない。芝田さんの人となりを表す直球のエピソードだ。
「一度、深くハマると、その後がおもしろい。その趣味の頻度がゆるやかになっても、体は感覚を忘れていないし、むしろ伸びしろがあります」
こうした感覚は、サーフィンが培ったものだ。高校生のころから続けていて、最初に趣味となったのはサーフィン。今でも波と時間次第で、湘南の海に繰り出している。その後に好きになる、サーフィン以外の趣味も、共通項が多い。
「成功も失敗も、自分の責任で、自分に返ってくるのが好き。どれも達成感が同じなんです」
のちに仕事となる写真も、サーフィンを撮ることから始めた。
「写真に関しても、マニアでもないし、サーフィンやフライフィッシングの延長線かもしれません」と、趣味から仕事になったとしても、芝田さんの写真に向き合うスタンスは、他の趣味と、そう変わらないようだ。↙︎
湘南をベースに、ファッション、広告、エディトリアル、映画と多岐にわたり活躍を続ける写真家、芝田満之さん。サーフィン、フライフィッシング、クライミング、自転車などを嗜む趣味人でもある。時間の余裕ができれば、のんびり過ごすよりも趣味の世界に没頭してしまう。好きなものには、とことんハマりやすい性格。どの趣味にも、深くのめり込んでいる。
ここ数年、精を出しているのはフライフィッシング。「北海道へよく行きます。それ以外の場所にも行きたいけど、仕事にならなくなるから封印しています」と笑うが、定期的に北海道を訪れているだけでも趣味性としては充分に高いだろう。そもそもはブラッド・ピットが出演していたフライフィッシング映画『リバー・ランズ・スルー・イット』を観て憧れ、そのロケ地の川にすぐに行ってしまったことがきっかけらしい。
「映画を観て、アメリカのモンタナ州まで飛んで行きましたね。現地のスクールで習って、一投目で釣れちゃったんですよ。ビギナーズラックですね」
興味を持ったらやってみないと気が済まない。芝田さんの人となりを表す直球のエピソードだ。
「一度、深くハマると、その後がおもしろい。その趣味の頻度がゆるやかになっても、体は感覚を忘れていないし、むしろ伸びしろがあります」
こうした感覚は、サーフィンが培ったものだ。高校生のころから続けていて、最初に趣味となったのはサーフィン。今でも波と時間次第で、湘南の海に繰り出している。その後に好きになる、サーフィン以外の趣味も、共通項が多い。
「成功も失敗も、自分の責任で、自分に返ってくるのが好き。どれも達成感が同じなんです」
のちに仕事となる写真も、サーフィンを撮ることから始めた。
「写真に関しても、マニアでもないし、サーフィンやフライフィッシングの延長線かもしれません」と、趣味から仕事になったとしても、芝田さんの写真に向き合うスタンスは、他の趣味と、そう変わらないようだ。↙︎
“自分がきれいだと思った感情を、写真に入力したい”
サーフィンと湘南に育てられた。その恩返し。
写真の仕事を始めた頃、主戦場はサーフィン雑誌だった。しかし当時から、サーファーが波に乗っているライディング写真を撮るよりも、その周辺の風景やサンセットなど、イメージカットを撮ることに興味があったという。
あるとき、縁あって当時の湘南のサーフカルチャーを牽引していたプロサーファー、故・大野薫さんと、『Daze』という写真&エッセイ集を発売した。夕日をバックにした人物のシルエット、ビーチ脇にあるなにげない花……。そんな情景をロマンティックに切り取った写真は斬新だった。これが話題となり、一気にサーフィン以外の写真を撮る仕事が増えていったという。
芝田さんの写真は、旅スナップのようなものではなく、画角や光の加減など、相当に練り込まれている。
「自分がきれいだなと思った感情を、写真に入力したい。そうしないと人には伝わりません」
とはいえ、受け取り方は人それぞれ。その基準をどこに設けるかといえば、自分の内側にしかない。芝田さんは、自分に正直なのだ。
「自分が気持ちいいことが一番。“僕がきれいだなと思ったものは、誰が見てもきれいだと感じる”はずだと信じています」
撮った写真を家で見ていて、まず自分が一番、感動しているらしい。
「自分で撮った写真を見て、『うおー』とか『すげー』とかひとりで大声出しちゃうんですよ。カミサンに『うるさい!』って怒られるんですけど(笑)」
芝田さんは、先日、10作目の写真集『Calling the Sea』を発売したばかり。“透明”という一貫したテーマに覆われたコンセプチュアルな作品である。これからは仕事としての撮影と並行して、本や作品も積極的に売っていきたいという。
「僕は、サーフィンと湘南に育てられたと思っています。その恩返しのつもりで『Calling the Sea』をつくりました。これからサーフィンや海が好きになってくれる人たちに、この写真集を届けたい」
『Calling the Sea』は 「外国の海だ」といわれれば、素直に信じてしまうような、たくさんの色彩豊かな水平線の写真が収められている。しかし実は、そのほとんどが、葉山を中心にした湘南の風景から紡がれている。
「最近では湘南全体に移住者が増えて、変わってきた部分もたくさんあります。しかし海はまったく変わりません。相変わらず、鎌倉から葉山にかけての海は、本当にきれいですよ」
海から離れて街で写真を撮りたい。そう願ったこともある芝田さんも、やはり原点である海への思い入れは強い。葉山に対して、ことさらに思いを口にすることはないが、海の写真を通して還元しているのだ。
写真の仕事を始めた頃、主戦場はサーフィン雑誌だった。しかし当時から、サーファーが波に乗っているライディング写真を撮るよりも、その周辺の風景やサンセットなど、イメージカットを撮ることに興味があったという。
あるとき、縁あって当時の湘南のサーフカルチャーを牽引していたプロサーファー、故・大野薫さんと、『Daze』という写真&エッセイ集を発売した。夕日をバックにした人物のシルエット、ビーチ脇にあるなにげない花……。そんな情景をロマンティックに切り取った写真は斬新だった。これが話題となり、一気にサーフィン以外の写真を撮る仕事が増えていったという。
芝田さんの写真は、旅スナップのようなものではなく、画角や光の加減など、相当に練り込まれている。
「自分がきれいだなと思った感情を、写真に入力したい。そうしないと人には伝わりません」
とはいえ、受け取り方は人それぞれ。その基準をどこに設けるかといえば、自分の内側にしかない。芝田さんは、自分に正直なのだ。
「自分が気持ちいいことが一番。“僕がきれいだなと思ったものは、誰が見てもきれいだと感じる”はずだと信じています」
撮った写真を家で見ていて、まず自分が一番、感動しているらしい。
「自分で撮った写真を見て、『うおー』とか『すげー』とかひとりで大声出しちゃうんですよ。カミサンに『うるさい!』って怒られるんですけど(笑)」
芝田さんは、先日、10作目の写真集『Calling the Sea』を発売したばかり。“透明”という一貫したテーマに覆われたコンセプチュアルな作品である。これからは仕事としての撮影と並行して、本や作品も積極的に売っていきたいという。
「僕は、サーフィンと湘南に育てられたと思っています。その恩返しのつもりで『Calling the Sea』をつくりました。これからサーフィンや海が好きになってくれる人たちに、この写真集を届けたい」
『Calling the Sea』は 「外国の海だ」といわれれば、素直に信じてしまうような、たくさんの色彩豊かな水平線の写真が収められている。しかし実は、そのほとんどが、葉山を中心にした湘南の風景から紡がれている。
「最近では湘南全体に移住者が増えて、変わってきた部分もたくさんあります。しかし海はまったく変わりません。相変わらず、鎌倉から葉山にかけての海は、本当にきれいですよ」
海から離れて街で写真を撮りたい。そう願ったこともある芝田さんも、やはり原点である海への思い入れは強い。葉山に対して、ことさらに思いを口にすることはないが、海の写真を通して還元しているのだ。
サーフィン
高校生のころから現在まで、常にサーフィンとともにあった。今でも一番の趣味であり、仕事でもあり、生き方を学んだ“教科書”でもある。
大野薫/横山泰介
当連載の撮影担当でもある写真家・横山泰介さんと大野薫さん。このふたりに湘南で出会わなかったら、今の自分はないと言い切る。多大な影響を受けたふたり。
『Calling the sea』
前作『SALTWATER SKY』から7年ぶりに発売した最新刊写真集。美しい海の表情を切り取った写真とともに、池澤夏樹さんのエッセイが随所に収められている。
妻
なかなか作品をほめてくれないという奥様の仁子(ちかこ)さん。“最初の読者”が一番厳しいらしい。結婚して23年、今では芝田さんよりサーフィンに行っているらしい。
THE PADDLER PROFILE
芝田満之
1955年生まれ、葉山在住。広告を中心に雑誌のエディトリアルや映画・CMなどの映像も多数手掛けている。代表的な作品集に『Daze』(マリン企画)、『Lei』(ワールドフォトプレス)、『カイマナヒラの家』(集英社)、『SUMMER BOHEMIANS』、『saltwater sky』(以上Bueno Book’s)などがある。近年多くの国際映画祭に招待された『コトバのない冬』の映像撮影を手掛けた。今春、『Calling the Sea』(Bueno Book’s)を発売した。