PADDLER’S EYE 湘南の今を独自取材した特集と連載

FEATURE ビールが地球を救う!? パタゴニアの挑戦

「パタゴニア」といえば、アウトドア好きにはおなじみのアパレル・メーカーだ。
機能性を追求しながらも、環境保護活動も積極的に行なってきた先進的な企業としても知られている。
そのパタゴニアが、今シーズンからビールを本格的に国内で販売するようになった。
なぜパタゴニアがビールを手がけたのか? その背景にあるものは?

2017.11.20 MON | UP

Photos:Patagonia,Paddler  Text:Paddler

先日、パタゴニア鎌倉ストアを訪れたところ、商品棚の一角に並んでいた、あるモノが目に止まった。アルミニウムのロング缶に見慣れたパタゴニアのロゴ、そこには「Long Root ALE」 という文字が。

ALE(エール)とは、ビールの一種。ここ数年のクラフトビール人気でよく耳にするようになったから、ご存知の方も多いだろう。「パタゴニアがビール?」と興味に駆られ、試しに購入。早速、自宅に戻り冷やしてグラスに注いでみた。琥珀色に純白のキメ細い泡、ホップが鼻にふわりと香る。ゴクリ、ゴク、ゴク。うまい! コクのある飲み口ながら爽やかな喉越し。飲んだ後に柑橘系のフルーティなフレーバーがふわりと広がる。口うるさいビール好きも納得の一本だろう。

早速、パタゴニアのウェブサイトでロング・ルート・エールをチェック。その紹介文には「1杯のビールで、地球を救う」という言葉が。これは、ますます気になる。というわけで、パタゴニアに取材をすることに。↙︎
100%リサイクル可能なアルミニウム缶を使用。瓶に比べ輸送時のCO2排出量を30%カット。また太陽光、酸素、熱を遮断しビールの風味を損なわない
『PATAGONIA PROVISIONS』(パタゴニア プロビジョンズ)は、ビールを始め、サーモン、フルーツバー、スープなどさまざまなフード・プロダクトを手がける
「11月15日から全国のパタゴニアストアで販売しています。おかげさまで好評ですが、実はパタゴニアはビールだけなく、いろいろなフード・プロダクトも手がけているんですよ」と答えるのは、パタゴニア日本支社の近藤勝宏さん。

「『PATAGONIA PROVISIONS』(パタゴニア プロビジョンズ)というブランドとして、2013年、本国のアメリカでスタートしました。日本に本格的に上陸したのは2016年ですね」

なるほど、ストアの商品棚を改めて見渡してみると、さまざまなパタゴニア プロビジョンズのアイテムが並んでいる。サーモン、スープ、フルーツバーとバラエティも豊かだが、そこには共通したコンセプトがあると言う。

「食品産業は自然環境へ負荷をかける最大の産業の一つです。生物の多様性を減少させ、土壌を滅ぼし気候変動や温暖化をもたらします。パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナードが、“食”を変革することで地球に与える影響を減らそうと考えて、フード・ビジネスをスタートさせました」

パタゴニア プロビジョンズは、原料がオーガニックやフェアトレードなのはもちろんのこと、持続可能な農法や漁法で採られた食材を積極的に使用することで、環境保護に取り組む農家や漁師を支援しようと試みているのだ。

「パタゴニアの企業ミッションは『最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する』。製品がアパレルでもフードでも目指すゴールは同じなのです」↙︎
パタゴニア プロビジョンズ担当の近藤勝宏さん。「“食”を通じ、地球が直面している環境問題を改善するという創業者イヴォン・シュイナードの思いが原点です」
さて、肝心のロング・ルート・エールだが、カギとなるのが原料の「カーンザ」だ。

「カーンザは多年生の穀物なので、通常の麦のような一年生の穀物のように毎年畑を耕す必要がありません。結果、土壌を侵食することもなく農薬も必要ありません。さらに大きな特徴は“長い根”です。小麦に比べて水の量が少なくて成長でき、二酸化炭素を閉じ込めておくことができます。結果、地球の温暖化を防ぐことにつながります」

農業によって自然環境を改善する「環境再生型農業」が今注目を集めつつあるが、カーンザはその最たる農産物なのだ。カーンザは、スパイシーな独特な風味を持つ。ビールに理想的な穀物と考えられていたが、一般的の原料である麦類と形状や性質が大きく異なり、醸造するのは至難の技。それを実現したのは、クラフトビールの聖地、ポートランドの「ホップワークス・アーバン・ブルワリー」だ。創業以来、オーガニックやサステナビリティにこだわり、数多くの受賞歴を誇る名ブルワリーだ。名うてのブルーマスター(醸造家)であるオーナーが、パタゴニア プロビジョンズの精神に共感し、苦心しながら試行錯誤を重ねて「ロング・ルート・エール」に仕上げた。

「パタゴニアは創業者イヴォンを始めビール好きが多いですからね(笑)。味には自信がありますよ」

なるほど、環境にもよくておいしいとは、ビール好きにとっては、いいことづくめだ。
では、もう一杯! おっと、飲み過ぎには注意しなければ。
自然環境を改善する「環境再生型農業」に最適な穀物カーンザだが、ビールに醸造するのは至難の技。ロング・ルート・エールで世界で初めて実現した
BEER GEEK(ビールオタク)が多いという本国パタゴニアのスタッフ。何度も試作を重ねてようやく自分達が納得いくビールにたどり着いた。その味にはお墨付き

INFORMATION

湘南で「ロング・ルート・エール」を飲める&購入できる店:
パタゴニア鎌倉ストア / 湘南T-SITE 湘南Lounge / ターブルオギノ 湘南 / パタゴニア オンラインストア / ベルテンポ(辻堂) / Natural Law(江ノ島) / CHIKYU(鵠沼海岸)

価格:626円(税込)
容量:473ml
発泡酒:カーンザ使用率15%・麦芽使用率25%未満
素材:麦芽(大麦 小麦)ホップ
アルコール分:5.5%
製造国:アメリカ合衆国
保存方法:できるだけ冷所にて保存

※未成年者の飲酒は法律で禁止されています
※空き缶はリサイクルへ