江の島といえば、「日本三大弁財天」の一つとして「江島神社」が有名だが、パワースポットとして密かな人気の「児玉神社」をご存じだろうか？

江の島に渡り、仲見世通りをまっすぐ進んだエスカー乗り場横の階段を上る。鳥居をくぐり、木々に囲まれた参道を登っていくと、こつ然と神社が現れる。 祀られているのは明治の名将・児玉源太郎（1852～1906年）。卓越した軍略をもって圧倒的に不利な状況であった日露戦争を勝利に導いたことから、創建以来、勝利・英知・福運の神として仰がれてきた。

司馬遼太郎の「坂の上の雲」にも登場する児玉氏は、日露戦争以前には、台湾総督、内務大臣も務めた。その優れた政治手腕から次期首相と目されていたが、自ら降格して大本営参謀次長となり、日露戦争開戦時には満州軍総参謀長として出陣した、気骨のある人物として知られる。日露戦争後ほどなくして55歳で急逝した児玉氏を偲んだ親友、政治運動家の杉山茂丸が、向島（東京・墨田区）の私邸に社を建立したのが「児玉神社」の始まりだ。後年、この社は児玉氏が愛した江の島に遷座され、1921年に創建された。

総督をつとめた関係で台湾との縁も深く、社殿は台湾から寄進された檜を用いた総檜造。設計は築地本願寺を手掛けたことでも知られる伊東忠太が担当し、近代神社建築の模範とも称えられている。口の中の玉が回る狛犬も、台湾から贈られたもの。また、神楽殿に掲げられた扁額「児玉神社」の文字は、元台湾総統、李登輝の筆によるものだ。

観光客でにぎわう江の島にありながら静寂な境内。木々の間からは江の島のヨットハーバーも見える。気持ちのよいパワースポットだ。