1956年創業の「鴨宮かのや酒店」は、知る人ぞ知るワイン・日本酒の名店だ。地域に寄り添う酒屋として時を刻みながら、３代目店主・今井 博さんがスタートさせた醸造酒のセレクトが評判を呼び、地元小田原から箱根、湘南地域に至る多くのホテルや飲食店が厚い信頼を寄せる専門店へと成長した。

昔ながらの酒屋の印象を心地よく裏切る店内。日本酒約200種、国内外のワイン約1,000種がぎっしりと並ぶ様は、見事なライブラリーを眺めるよう。店内を占める棚には、県別に国内ワイン、国別に海外のワインが並ぶ。中でも日本ワインの充実ぶりは県内でも圧倒的。100以上の生産者からの600種ほどを揃えている。さらに壁に備えた専用冷蔵庫には、一方に約100種の自然派ワインが、もう一方には店主が敬愛する地元の酒蔵・川西屋酒造店による「丹沢山」と「隆（りゅう）」をメインに、全国の選りすぐりの日本酒が顔を覗かせる。その数、一升瓶換算で800本。

実はお酒には弱いと話す店主。だからこそ旨いお酒に敏感だ。そしてその旨さを裏づける作り手のストーリーに心を震わせる。「高ければ “良い酒” という訳ではないんです。品質と価格が見合い、さらにそれ以上の価値があるものを選んでいます」と。ここでは、高級なラベルから1,000円前後のテーブルワインまで、価格の幅も実に豊か。そのどれ一つをとっても今井さんが自信を持って勧めるお墨付きだ。必ず自分に似合う１本を探せる安心感を与えてくれる。

また、月に１度の「お味魅会（おあじみかい）」にも参加してみてほしい。予約がいらないアットホームな店内での試飲会だ。お酒初心者から上級者まで、ローカルはもちろん都内からのファンも駆けつける。「自分たちができることを長く続けてゆく。僕らもお客さんも肩肘張らずに一緒に楽しめる。それを一番大切にしています」

謙虚でいて本気、飾らずしてカッコ良い店主の生き方がにじむ店だ。