目の前に広がるのは、人工物に遮られることのない青々とした緑の景色と大空。2016年に開園した「池子の森自然公園」は、かつて戦時中に旧日本軍によって弾薬庫が造営され、敗戦後は米軍の管理下となった歴史を背景に抱える。後に米軍住宅地区と化したその広大な敷地の一部が逗子市と共同使用になり、市が整備したのがこの公園だ。

里山に広がる約30ヘクタールもの緑地エリアは、約70年もの間放置されていたため、数々の希少な動植物が生息する。春には新緑と咲き誇る花々、春から初夏にかけてはオオルリやウグイスの賑やかな合唱、秋には荻の揺らぎや紅葉を楽しむことができる。常緑樹も多く、冬でも青々とした森の景色が残り、季節を問わずに出かけたくなる。 ヨシで囲まれた池には周辺の小川からの清流が注ぎ、蛍やハグロトンボなどの水生昆虫、メダカやシュレーゲルアオガエルなどが生息。そこには美しい野鳥たちの姿もある。そんなのどかな自然の鑑賞はもちろん、広大な園内に敷かれた芝生エリアでのピクニック、森を縫う散策コースでの散歩も最高だ。

逗子本来の自然の姿が残る貴重な公園。ここを次世代へ残そうと、今は週末と休日のみが開園となっている。優しい時間がゆったりと流れる場所——逗子という街の魅力を映し出す公園だ。