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GUIDE SPOT hotel aiaoi 鎌倉 | ホテル

  Text: Paddler

2016年、hotel aiaoiは鎌倉・長谷にひっそりとその扉を開いた。昭和に遡るビルの3階。1フロアを改装し、6つの客室を整えた小さなホテルだ。外に看板はなく、外観からは想像さえしなかった静謐で穏やかな世界が広がっている。

旅といえば、たいていの人が日常からのエスケープと捉えるだろう。限られた時間で自分をエンターテインするぎっしりの予定を手に、日常では味わえない特別な空間やサービスを宿にも求めるかもしれない。そんな旅人たちをaiaoiは心地よく裏切ってくれる。

オーナーは、東京でそれぞれに飲食業界、商業施設運営業界で活躍をしてきた小室剛さん・裕子さんご夫妻。旅好きの剛さんが若き頃から抱えた宿を生業にするという想いを、鎌倉に暮らすことで2人が見つけた“日常” に落とし込んだ。実現したのは、物質社会に流されることのない、本当に大切なモノだけに囲まれた日常の暮らしの延長上にあるホテルだった。

ここでは、美しく整えられた広いキッチンが招き入れるカフェラウンジがレセプションだ。和の静謐さと洋の大らかさ、古都鎌倉の品ある生活感をミックスしたかのような心地よい空間。ここで一杯のお茶をいただき、楢材を手削りした「なぐり床」の優しい感触を足裏に覚えながら客室へと導かれる。できるだけ情報やモノを削ぎ落とした空間は、手入れがなされた古材や古道具でしつらわれ、ベッドにはフッカリと空気を含んだ布団とオリジナルでつくったという寝間着がセットされている。一つ一つのモノの魅力や温もりが際立ち、心を動かされる。

朝陽で目覚める翌朝は、「杉本薬局」(大船)3代目・杉本格朗さん のブレンドによるオリジナルの和漢茶から。それに続く朝食は、地元の漁師から届く海の幸や、馴染みの八百屋などからの旬の食材を使った手作りの和の食事だ。土鍋で焚く米は、裕子さんの父が作る肥料農薬不使用の五分づき米で、そのぬか床を利用した自家製のぬか漬けも供される。

簡素極小にして、オーナーの美意識と人生観が凝縮された日常の中のホリデー。ふと自らの日常の在り方に振り返らされる……そんな体験が待っている。

DATA

hotel aiaoi

ホテル アイアオイ
神奈川県 鎌倉市長谷2-16-15 サイトウビル3F


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「ご夫婦が営む小さなホテル。空間も食事もご夫婦もとても素敵です。朝食にでる四季ごとの和漢茶は、おふたりのコンセプトにそってブレンドさせて頂きました。朝食で体を整え鎌倉を楽しんでほしい、と言うおふたりの真心からのもの」杉本格朗さん

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