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GUIDE SPOT 八雲神社と鎌倉大町まつり 鎌倉 | 神社・郷土祭り

Photo: 鎌倉大町八雲みこし会  Text: Paddler

観光地の顔とは少し違う鎌倉の日常に寄り添う素朴な佇まいの「八雲神社」。森林に囲まれたこの鎌倉・大町の鎮守は、控えめな印象ながら鎌倉最古の“厄除けの社”という深い歴史に縁取られた由緒ある神社だ(永保1081-84年創建)。はじまりは、奥州への道中に鎌倉に立ち寄った源義光に由縁する。当時、この地に流行していた疫病に苦しむ人々のために、義光が京都祇園社の祭神を勧請したのがこの神社。そのおかげで悪疫は退散、人々に安堵がもたらされたという。この氏神様を地元の人は「八雲さん」「お天王さん」と呼び親しんでいる。

普段はひっそりと大町を見守る八雲神社だが、1年で最も地元民の愛に包まれ輝く時がある。それが古から今に続く夏の「鎌倉大町まつり」だ。社の歴史とともに歩んできたこの伝統的な祭りは、神体を乗せた4基の神輿(みこし)と地元の氏子たちが主役。1日を通じ、氏神様が乘る神輿が町内を練り歩き、人々の幸福を祈願する。

昼は、白丁烏帽子の姿をした氏子の男たちが、天王歌を歌いながら神輿を担いで町内を巡回する「お渡り」が。その道中に、幼児を抱いて神輿の下をくぐって健康祈願をする「神輿くぐり」の風習も健在だ。夜には、提灯(ちょうちん)に火が灯り、幻想的に浮かび上がる4基の神輿による「神輿ぶり」を披露。はんてん姿に着替えた男女の氏子たちが、「大町四ツ角」付近で勇ましく神輿を振り動かす姿は圧巻だ。

神輿をかつぐ者にも、拝観する人にも、悪疫を除去し、福と繁盛を招くことを約束するというのが古からの言い伝え。この日に、八雲神社が今に繋げてきた大町の歴史と人々の団結力を感じぬ人はいないだろう。生まれた町、愛する町の伝統を守る人、受け継ぐ人、伝える人——そんな温かい人々に彩られた八雲神社と鎌倉大町まつりだ。

DATA

八雲神社と鎌倉大町まつり

八雲神社
神奈川県鎌倉市大町 1-11-22
TEL. 0467-22-3347

鎌倉大町まつり
お問い合わせ:鎌倉大町八雲みこし会
http://www.kamakura-omachi.jp/

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「小さな神社ですが氏神さまなので、新年のお参りだけでなくよく訪れます。なかでも夏の『大町まつり』に神社から出る神輿は一見の価値あり。たくさんの提灯で飾られた神輿4基が一つに結ばれ、大町四ツ角で揺れる様は圧巻です」井伊乃士さん

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