JR逗子駅を中心に四方に伸びるいくつもの商店街はどこも新旧の店が軒を連ね、どこか懐かしいスローなムードが漂う。その一つ、「池田通り商店街」に、洒落た店構えの小さなオフィス「Atelier Nock（アトリエ ノック）」がある。通りに面した大きなウッドフレームの窓からは、建築やデザインの専門誌、様々なタイルや粋な照明器具などが覗き、一見何のショップかと好奇心が掻き立てられる。ここは横山史郎さんが主宰するオフィスで、住宅やマンション、店舗のデザインやリノベーション、施工を手掛けている。

逗子出身の横山さんは、両親がグラフィックデザイナーだったため自然とデザインに興味を持ったという。都内での仕事も手がけながらも、自身のオフィスは地元にこだわり2014年にここをオープン。木材の柔らいテクスチャーと、ガラスやタイル、鉄やコンクリートといった硬質な素材というコントラスあるマテリアルを見事に調和させるデザインがお得意だ。そんな横山さんのセンスは、このオフィスはもちろん、多くのローカルたちに愛される地元の洒落た飲食店の数々、さらにコンクリートと木材を組み合わせデザインしたスツールなど、魅力的な実例にしっかりと息づいている。

物件のメンテナンスにおいても、小回りが利くセンスのよい施工業者を見つけることは実に難しい。そんな中「アトリエ ノック」は、電球一つの付け替えから相談に乗ってくれる頼もしい存在でも。クライアントの要望に応えるため、良質でリーズナブルな材木屋を選りすぐり、照明器具など理想のアイテムを自ら蚤の市に出向いて探し出すなど、きめ細やかな対応が横山さんらしさだ。

生粋の逗子ローカルだけに、地元の環境、住まう人々のニーズやライフスタイルを知り尽くした横山さん。お客の8割が地元の人ということも、波がよければ仕事の合間を縫ってサーフィンに出かけるというのも納得だ。