葉山大道に近い「BOOKSHOP Kasper（カスパール）」は、単なる“ブックショップ”ではない。書棚に並ぶのは、海外のエッジィなファション誌から、美術書や料理本、そして児童文学から絵本まで、店主の青木真緒さんがジャンルにこだわらずにセレクトした、何度でも読み返したくなる本、身近にずっと置いておきたくなるような本だ。店内では、コーヒーを片手にゆっくりと本を選ぶことができ、併設のギャラリーでは多くの個展やイベントも開催している。

本とアートに心を寄せてきた青木さん。ここでは、まったくそれらの境界を感じることはない。すべてが同じ感覚でセレクトされ一体化しているのだ。店は青木さんのアイデンティティそのものであり、彼女に共鳴するアーティストたちの多くがここで個展を開いてきた。画家の田中健太郎さんや生平桜子さん、サイトウナオコさんなどをはじめ、2020年からは海外のアーティストたちの個展も予定している。また、入口近くの印象的なトラの絵やケンタウロスのショップロゴも、親しくする画家の山口洋佑さんの作品でもある。

青木さんは、神奈川県立近代美術館 葉山館をよく訪れてはこの地を散策し、葉山の文化や人々に触れ、初めてでもひとりでも入りやすく、居心地がよい空間をつくりだした。道に面した大きな窓や温もりのあるインテリア、そしてアロマのやわらかい香りに包まれ、穏やかな時間を過ごすことができる。近隣だけでなく遠方の人々や、かつての青木さんのように美術館帰りに訪れる人も多い。

アートを身近に感じてもらえるよう“食”に結びつけたイベントも開催しているが、すぐにキャンセル待ちになるほどの人気ぶり。お気に入りの本やアーティストとの出会いに、ぜひ訪れてほしい場所だ。