茅ヶ崎の「えぼし」といえば、地元だけでなく遠方からも多くのファンを集めてきた、魚がおいしい湘南の居酒屋として有名だ。驚くべきは、選びきれないほどの豊富なメニュー。魚は地の物や、豊洲市場で目利きが選ぶ新鮮な素材が届く。刺身はもちろん、煮汁を継ぎ足してきた秘伝のタレが奥深い味わいの煮魚も大人気で、これを目当てに来店する客も多い。そのほか、アジフライ、貝料理、魚介の味噌汁、そして創業時から変わらぬ炭火焼き鳥など、幅広い客層に人気のメニューが何枚ものお品書きを埋め尽くす。その数なんと200品目以上はあるだろう。

料理の中には、客が飽きず、若い世代にも満足してもらえるよう、その時代に合わせて味付けや組み合わせをアレンジしているものも多い。例えば、カツオのタタキは、ただ薬味を載せるのではなく、キムチやテンメンジャン（中華甘味噌）で味付けされた「カツオタタキサラダ」として、野菜と一緒にモリモリ食べられるメニューとなっている。最近はデザートにも力を入れていて、一番人気の「かぼちゃプリン」や、天草を煮出すところから作る「あんみつ」など、20種ほどのデザートはすべて自家製だ。だから、お酒を飲まない客や子どもたちも最後まで楽しめる。また、座敷だと膝が痛くなる年代も、まだじっと座っていられない孫の代も寛げるよう、座敷にテーブルを置いた席も用意。親子３世代で訪れる客も多いそうだ。

女将の鈴木マサ子さんは、江戸時代から続く漁師の家系の出。“お客様に喜んでいただきたい” という、開店当初と変わらない鈴木さんの一途で温かい思いこそが、40余年人気店であり続けた理由だろう。ランチでもディナーでも、友人同士、カップル、家族、そして宴会まで、心いくまで楽しめる店だ。