海の景色を楽しませる国道134号線が西の逗子海岸から、東の長者ヶ崎からひと時、濃緑を背景にする内陸を走る場所に「もり兵衛」は佇む。目の前の交差点を南に下れば、森戸海岸へも。まるで海岸と海岸をつなぐ寄港地のようなロケーションだ。

小さくつつましやかな店構えだが、店内の意外な広さに驚かされる。気持ち良い吹き抜けが目を引く２層づくりで、風情のある和風な内装がとてもいい。店主は生粋の葉山っ子である守谷 淳さん。健康食である「そば」に魅了され、16歳で始めた修行から、この道一筋のそば職人だ。彼が自宅で丁寧に手打ちするのは、八ヶ岳産の最高級のそば粉とアルカリイオン水を利用した「二八そば」だ。色白の艶やかさを持った細みのそばは、コシとそば粉の風味がしっかりと味わえる。

そばはもちろんのこと、この店で人気なのは、煮物やだし巻き玉子、天ぷらの盛り合わせなどの家庭的な味わいの一品料理、そしてほかの店ではなかなかお目にかからない珍しい日本酒や焼酎のラインナップ。まずは、つまみとお酒で一杯やり、最後にツルッとそばをいただきたい。

ビーチへの訪問客からも、地元ローカルたちからも愛され21年目。「おいしいそばを気軽に楽しんでもらいたい」という店主の思いから、そばも料理も良心的な価格で提供する「もり兵衛」は、葉山で立ち寄りたい隠れ家的そば屋だ。