感性の高いサーファーやミュージシャン、アーティストたちなどによって軽快で拓かれたビーチカルチャーが築き上げられてきた茅ヶ崎。「海が見える庭」という意味を持つ「Mar-Vista Garden」は、そんなビーチタウンの魅力を今に継承しながら、新しい時代を紡ぐ家具屋にとどまらないカルチャー発信基地と言える場所だ。

築20年以上の集合住宅を大胆にリノベーションした300平米ものショップは、カリフォルニアの倉庫をイメージしたもの。余計な壁を排し、鉄骨だけを残したシームレスな空間は、迫力と奥行きのある異空間だ。そこに、米・西海岸を中心に買い付けられた良質なビンテージ家具や調度品が所狭しに並ぶ。一つとして同じ表情をもつモノはない。新しい大量生産品には決してない、経年したものだけが醸し出す趣きとぬくもりに惹きつけられる。

その魅力的なセレクトとムードは、少年期から湘南で過ごし、現在LAに30余年暮らすバイヤーの白瀬泉氏の価値観とネットワークが成せるもの。70年代に世界的なスケートボードブームの火付け役となったLA発のブランド「Dogtown Skateboards」の設立メンバーでもあり、サーフィンからバイク、音楽まで西海岸カルチャーを日米間で発信してきた人だ。

時の記憶を感じさせる店内の壁は、月２名の地元アーティストたちの作品でさらに輝きを増す。このアートイベントは、客たちとアートの距離を近づけると同時に、若手アーティストの活躍の場を広げてきた。また、湘南内外から人気の、東北復興支援を軸にした「スマイルマーケット」やオーガニック商品を紹介する「エコライフマーケット」などは、一過性のものではなく訪問者が楽しみながら自然とその本質に触れられるようアプローチをする活動だ。

“売る＆賈う” だけの一時的な体験ではなく、モノやヒトとの間にある “一期一会”から生まれるストーリーを大切にする「Mar-Vista Garden」。生き方や暮らし方をも刺激し、広がりをももたらしてくれる場所だ。