ここ数年、洗練された新たな飲食店やショップも増え、かつてからの店もモダンにリスタイリングされるなど、若返りの様子を見せる御成通り商店街。その片隅に、過去にタイムスリップしたかのような懐かしい佇まいの店がある。それが「くろぬま」だ。大正12年(1923年) 創業の紙と民芸品の専門店は、50年ほど前から子どもたちのための玩具を扱い始めた。店に所狭しと並ぶのは、昭和という時代を彷彿させる玩具の数々だ。

おはじきにスーパーボール、ベーゴマに銀玉鉄砲、ブリキのミニカーなど、レトロな玩具の種類の多さに加え、60円からせいぜい300円台という昭和の時代と変わらぬ価格帯にも驚かされる。正月になれば、昔ながらの凧や羽子板が、夏ともなれば店の半分に豊富な種類の花火がバラ売りで登場する。小銭を握ってやってくる子どもも、大人たちまでもがワクワクさせられるのだ。

店主は80代となった黒沼逹さん。町の変化や時代のスピードに動じず、昔ながらの佇まい、商いを大切にしてきた。この店で子ども時代を過ごした多くの地元の大人たち、そしてその子どもや孫たちからの愛がこの店を今に生かしてきたのだろう。これからもローカルたちとともに時を刻んでいく店であってほしい。