江ノ電「江ノ島駅」から徒歩すぐ。ここに33年続くカレー屋がある。店名は、マスターの吉田将武（よしだ まさたけ）さんが若き頃、車で250mの高さから転落したカルフォルニアの断崖絶壁「Big Sur」に由来する。「落ちるところまで落ちたので、これ以上落ちることはない」と命名したと言う強運の持ち主は、一見気難しそうでいて気さく、面白い話に溢れる人柄。スパイスが効いたうまいカレーはもちろん、そんなマスターに惹かれてくる常連が多い。

カウンター６席のみの店内は、まるで異空間。所狭しとポスターや記事の切り抜き、客からの土産だというさまざまなオブジェが飾られ、どこかノスタルジックで居心地がいい。
店で味わえるのは、小麦粉を使わないサラッとしたカレーだ。体に良いものに傾倒した母親の手料理で育ったマスターのDNAは、健康思考。スパイスの効能を生かした「元気になるカレー」を謳い、自ら30種以上のスパイスを調合する。ライスには黒米・玄米・白米のブレンドを使用し、塩分量も小数点３桁まで厳密だ。そして、カレーからドレッシング、ステーキソースまで、時間をかけた手作り。香りがよく、多種のスパイスの風味が効いた意外にもあっさりしたカレーに、誰もが病みつきになる。

プレートには、挑戦したくなるユニークなネーミングも多い。月初め土日限定の「新世紀カレー」や、月末土日のみの「世紀末カレー」。欲張りな常連さんのあだ名がついた「ドラゴンプレート」なども。牛肉とレタス炒めを添えたライスに、カレーやステーキソースを好きなだけかけて食べる一皿だ。

多くの人に愛されてきたことを感じるBig Sur。あえて店を大きくせず、料理へのこだわりと店の空気感を大切にするマスターとカレーに元気づけられる。