ほのかな潮の香り、田越川のせせらぎを感じながらたどり着くビーチマフィン。セレクトされたオーガニック食材と、それらで丁寧に作られたスイーツが店先に並び、左手奥に広がるカフェでは、地元のオーガニック食材をできるだけ用いた食事をもてなしてくれる。自家製チリソースと玄米の相性が抜群な「レッドチリとライス」、雑穀パンに野菜のハンバーグを挟んだ食べ応えのある「ベジバーガー」などと一緒に、「ヨロッコビール」を味わうのもいい。熱・ろ過処理をせず、生きた酵母にこだわった逗子の地ビールだ。

90年の時を経た木造づくりの店は、古いアンティーク家具や旅先からの小物、書籍などで彩られ、まるでプライベートハウスの居間にいるかのよう。懐かしい感覚と、タイムレスな居心地の良さに、ついつい長居をしてしまう。

自らの体調不良を機に、オーガニック食材の輸入を始めた店主、クラウチ マリコさん。今こそブームとなったオーガニックライフだが、まだその概念も商品も希薄であった時代に、その普及に努めてきた先駆け的存在だ。都内での暮らしを経、辿り着いたこの場所は、仕事においても顔と顔を合わせて信頼し合える人間関係を求めた結果だそう。「普通の毎日を大切にしたい」という店主の優しさと価値観が、ビーチマフィンの食と空間に息づいている。