日本ヨット発祥の地といわれる葉山には、学生から年配者まで、昔から多くのヨットマンが集う。この海の男たちに愛され続けてきたのが「あぶずり食堂」だ。

葉山鐙摺（あぶずり）港の目の前にあるこの店が開業したのは、葉山マリーナができる以前。今の女将さんの母親が、葉山に集まる人々や地元民のお腹を満たすため、ボリュームたっぷりの料理を提供しようと始めた。コンビニもまだない時代、当時の開店時刻の朝6時には、出航前のヨットマンや釣り人が列を成していたそうだ。

今でも彼らにお腹いっぱいになってもらいたい、という気持ちは変わらない。地魚をベースに、日によって変わる煮魚定食やさざえ丼など海辺の店らしい品のほかに、ラーメンやチャーハン、野菜炒め定食、揚げ物、そして朝定食などのバリエーション豊かなメニューが壁に貼りだされている。そして、どの料理もボリューム満点だ。地元の常連も多いこの店は、毎日来ても飽きず、手ごろな価格でおいしいものをお腹いっぱい食べられる”町の食堂” 的な側面も持っているのだ。

「週末の刺身がおいしいんだよ！」と常連客のひとりがこっそり教えてくれた。女将さんいわく、ガッツリと食べる客層が多い平日に比べ、休日はつまみながら酒を楽しみたい客も多く、週末だけ刺身を提供しているというわけだ。

基本的に休みがないのは、昔ながらの習慣。「今更変えられないからね」と女将さんは微笑む。気取らない地元の雰囲気を味わえる店だ。