海の近さを感じさせる大きな空、柔らかく届く潮風を感じながら、歩道のベンチ席で焼き鳥を片手にビールを一杯ひっかける。「秀吉」とくれば、そんな外呑みスタイルが最高だ。場所は、昭和３年から続くレンバイ（鎌倉市農協連即売所）のお隣。飾らず、媚びず、20年変わらぬ佇まいとおいしさを守り、鎌倉の日常の顔として地元民に愛されている。

黙々と鶏を焼くのは、店主の秀吉さん。脱サラをして飲食の世界に入り、修行を重ねて今の店舗オープンに漕ぎ着けた。「誰もが気軽に立ち寄れる場所がいい。何よりもおいしいものを提供したい」。口数は少ないが、発する一言一言に店主の心温かさが滲んでいる。

鶏は産地にこだわった国産地鶏。ネギ間やつくね、砂肝から鶏皮などの定番（150円/本～）はもちろん、フォアグラや合鴨ロースといった高級食材のものまで30種がそろう。焼き鳥以外にも「鳥っぱ」と名付けた鶏もつの煮込みや、タレに漬け込んだうずら卵の串焼き「秀吉玉子」も人気だ。

６席ある店内カウンターで一杯やるも、テイクアウトもいいが、やっぱりここでは外呑みがいい。今日も鶏を焼く芳ばしいかおりに誘われ、勤め帰りや散歩がてら、波乗りの後に立ち寄る客たちで賑う。