大磯・高麗山の麓、高来神社境内に隣接する「象鯨」は、木々のかおりを満たす風が心地よく吹き抜ける特別な場所だ。ここは、彫刻家、西村浩幸さんの自邸であり、彼が主宰するギャラリー「世代工房」と、アーティストを育む「象鯨美術学院」が一直線上に存在する。そして、異分野の作家たちが集い、様々なクライアントのための作品をつくり出す ”緩やかなアーティスト共同体” 、「（株）象鯨」の基地でも。

そもそもこの場所は、西村さんの義理の父、日本の抽象彫刻を代表する彫刻家、故・保田春彦氏の自宅兼アトリエを受け継いだ場所。「世代工房」では、保田氏の作品を始め、その妻でイタリア人彫刻家の故・シルビアさんの遺作を元につくられた見事なステンドガラス作品（志田政人作）が常設展示されている。さらに、朽ち果てる運命の伐採倒木の大木を削りだし、新たな息を吹き込む西村さんの彫刻作品と、彼と彫刻家、里佳孝さんの共同作、使える彫刻「象鯨彫刻家具」の数々にも目を奪われる。

一方、「象鯨美術学院」は、某著名予備校の元主任で、カリスマ講師でもあった西村さんが、自らの教育方針を持って開設したアカデミー。美大受験のノウハウを教えるに留まらず、アーティストとしての将来をどう生きるかを導くレッスンが魅力だ。一般にも開かれたコースも見逃せない。

ここでは、国籍や文化、世代を超え、プリミティブな自然のエネルギーと、世界へ開かれたの感性がクロスオーバーする。時代を超え、アーティストを生み、活かし、受け継でゆく、まさに世代工房を感じる場所だ。