CITY GUIDE THE PADDLERが紹介するとっておきのスポット
GUIDE SPOT ブーランジェリーヤマシタ ニ宮 | パン屋・カフェ
吾妻山の裾野の緑を背景に、慎ましやかに佇むブーランジェリーヤマシタ。1坪ほどの店内は、やっと3人の客が入れる程度。そこには、ていねいに見やすく並べられた30種ほどのパンが、素朴ながら美しい景色をなし、食欲を掻き立ててくる。いつもここで思い起こすのが、建築家、ル・コルビュジエの「カップ・マルタンの休暇小屋」だ。南仏で夫人と最小限の暮らしを営むために、コルビジェが建てた8畳ほどの小屋。簡素極小にして、住み手の美意識と人生観が凝縮されたものだ。 それは、パン職人でオーナーの山下雄作さんが作るパンにおいても感じられるもの。基本は、粉・塩・水・自家製天然酵母と、できるだけ削ぎ落とした材料で手作りされる。シンプルなだけに偽れない。噛むほどに甘く、滋味が滲み、ていねいなものづくりの姿勢がダイレクトに伝わってくる。 そんなパンをお目当てに、今日も客足は朝から絶えない。遠方からやって来る客にもくつろいで欲しいと店バックヤードに設けたカフェでは、パンと一緒に、香ばしいコーヒーや野菜たっぷりのスープ、サラダも楽しめる。作り手と買い手の距離が近く、まるで鳥のネストにいるかのような居心地もここの魅力だ。 デンマーク暮らしを経、北欧家具メーカーにてデザインと家具の第一線で活躍をしてきた山下さん。誰の価値観にも左右されず、素の自分に戻れる場所を求め、行き着いたのが二宮という町、そしてパン職人の道だったという。今、山下さんは、自らのルーツを大切にする気持ちをパン作りの喜びに重ねている。
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「日本での生活が長くなると、北欧の生活を思い出し、ここのパンが恋しくなります。時間のある時はカフェスペースで食事をしながら、次の北欧買い付けのことを考えます」山口太郎さん