海岸からの柔らかな潮風を感じる平塚・松風町。所々に黒松の大木が顔を覗かせる閑静な住宅街に「menu（メニュー）」はある。店頭にズラリと並ぶ味わいを増したウッドチェアを目にした瞬間、何かを見つけ出す楽しみに心が踊らされる。

ここに集まるのは、店主・石井裕人さんが年に３度、イギリスをメインに、ベルギーやドイツなどへ自ら足を運び買い付けるアンティークやビンテージの品々。マニアを唸らせる年代物のウィンザーチェアから、アングルポイズ社のインダストリアルなデスクランプ、1,000円代のガラス瓶まで、日常で幅広く使えるモノをそろえている。中でも、英TGグリーン社の陶器「コーニッシュウェア」は、2008年の開店当時から力を入れ蒐集しているもの。海と波をイメージしたボーダー柄が湘南ムードにぴったりだ。

「ネット販売が主流となった今、お客さんには古き良きモノの価値を実際に触れ、知ってもらいたい。ここで買わなくてもいいんですよ。多くに触れ自分らしいものを見つけてほしい。その手助けが僕の楽しみであり、仕事だと思っています」

19歳で初めた横浜のアンティーク店でのアルバイトから、この道に進み10年。その後、都内でカフェの運営にも7年携わってきた石井さん。満を期して地元平塚で開業したこの店は、まさに石井さんのこれまでの人生の集大成だ。ジャズを聞きながら、ハンドドリップによる芳ばしいコーヒーを片手に、新旧の化学反応が見せる魅力的な空気を体感することができる。

目利きである石井さんの感性と、豊かな人間性が隅々まで息づく「menu」へ。一期一会の興奮を味わいに通いたい。