CITY GUIDE THE PADDLERが紹介するとっておきのスポット
GUIDE SPOT ブレッド&サーカス 湯河原 | ベーカリー
芳ばしいパンの香りが鼻をくすぐる。平日の朝10時。開店は11時だというのに、店頭にはこの香りをご馳走に、コーヒーを片手に列をなす人たちがいる。開店前ともなると40人ほどの長蛇の列が。それが「ブレッド&サーカス」の日常の風景。売り切れゴメンの閉店も度々なので、ご注意願いたい。
お目当ては、丁寧に粉からおこした天然酵母による自家製パンだ。しっとりとして奥行きある味わいは、全国各地にファンを持つ。5人がやっと入れるほどの店内は、1人が買い終えると1人が入店、というスタイルが定着している。そんなコンパクトな空間には、どっしりと存在感のある多種多様なパン種がぎっしり。その様子はまるで、パンを常食とするヨーロッパにある昔ながらのパン屋。そうここには、1996年の創業以来、店主、寺本五郎さんと康子さんご夫妻が考える“本当にいいパン” = “毎日食べたくなるおいしく、手頃で、日が経っても楽しめるパン” が詰まっている。日常の料理に寄り添い、料理がおいしくなる食事パン作りを貫いている。
まず手初めには、食パン「修道院のパン」やどっしりとした「カンパーニュ」を。サンドイッチや様々なトッピングをしても、すべてが引き立ちおいしくいただける万能パンだ。バターやチーズとの相性が抜群のライ麦の黒パン「プンパニッケル」や、無加糖なのに自然の甘さが絶妙で病み付きになる「コンコード」も見逃せない。40~50種の中から直感で選んでも、目的に合わせたオススメを頂いても決して後悔することはない。
建築家であった五郎さんの体調不良で、東京・青山から真鶴へ転地療養にやってきてことを機に始まった二人三脚でのパンづくリ。2015年には、そのおいしさの秘密を大公開する本も出版した。そんな2人の惜しみないパンへの愛情と自信が、手に取るどのパンにも滲んでいる。
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「天然酵母の気合いの入ったパン屋さん。’88年来のつき合いだが、今や朝から長蛇の列でなかなかパンが買えない。建築家だった店主、五郎さんの依頼で、木の塊から椅子を彫り出したのが、僕が手がける『彫刻家具』のきっかけとなった」西村浩幸さん