CITY GUIDE THE PADDLERが紹介するとっておきのスポット
GUIDE SPOT MULLET 平塚 | ヘアサロン
JR平塚駅南口から西寄りに海へと伸びる道「扇の松海岸通り」。5分も歩けば、黒松があちこちに姿を見せ、かつて文豪や財界人の別荘が集まった湘南らしい空気が漂いはじめる。MULLET(マレット)への道のりは、まさにこの通りに鎮座する巨大な黒松「扇の松」が目印。その手前、左へ折れた閑静な住宅街に忽然と現れる。
店主は、都内を活躍の場にしてきた平塚出身のヘアスタイリスト・古川雅一さん。学生時代から好きだったと言うこの海岸エリアに、出店という形で戻って来た。1席だけが占拠する店内は、地元の友人で造形家の鈴木司さん率いる「NADESIKO BROOKLYN」によるもの。80年代風の幾何学パータンと色彩に、ウッドやメタルといった素朴な素材、イームズやジョージ・ネルソンなどのビンテージの家具やオブジェを重ね、刺激と温もりを心地よく共存させている。
「時間に追われているヘアサロンが多く、通いたいと思える場所がなくて。技術だけでなく、そこで過ごすこと自体が気持ち良く、少しだけ日常とは違う空間、という場所にしたかったんです」
隠れ家的な店に口コミだけで多くのファンが集まる理由は、古川さんの技術の高さは無論、この空間と彼と過ごす時間の心地よさにあると実感する。
「僕はスタイルやトレンドを意識しません。丁寧にカットをすること、個人のキャラクターを引き出すことを大切にしています。お客さんが “自分とはなんぞや?” に向き合える場所でありたい。人の後を追うのではなく、自分の価値観やアイデンティティを大切に育てる……そんなことが提案できるようになりたい」
現在古川さんは週1日、東京・下北沢の古着屋にも勤めているという。ヘアと古着の世界の連動を目指しているのだ。スタイルや時代を超え、日常と非日常の間に立脚する「居心地よさ」「自分らしさ」をマレットは提案している。
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