PADDLER’S EYE 湘南の今を独自取材した特集と連載

SPORTS&OUTDOOR マウンテンバイク・ダウンヒル -後編- 永田 隼也さん ENJOY MTB!

マウンテンバイクに興味が湧いても、さてどうやって始めたものか、想像すらつかない方も多いはず。
そこで、後編では乗り始めるために必要なギアや基礎知識、
湘南ならではの楽しみ方をMTBダウンヒルの元日本チャンピオン永田隼也さんにレクチャーしてもらおう。

#002 マウンテンバイク・ダウンヒル 前編はこちらから

Photos : Yasuma Miura  Text:Kei Ikeda

——マウンテンバイクって、どんな競技なんですか?
自然の中を自転車で走る競技で、さまざまな種目があります。僕がメインに取り組んでいるのは、「ダウンヒル」と呼ばれる種目です。文字通り、山から下り降りるタイムを競うもので、スキー場やバイクパークなどがレース会場になります。土で作られたコースのどのラインを攻めるかを瞬時に考えながら走るのですが、スピードは時速70kmを超えることもあるんですよ。シーズンは3〜11月。日本での知名度はまだまだ低いですが、国内では10人ほどの選手がプロとして活動していて、海外ツアーも回っています。イギリスやオーストラリアが強豪国です。

——トップ選手の年齢層は若い競技なのですか?
体力や技術だけでなく、精神面の強さも求められるからか、ワールドシリーズには30代後半のトップ選手も多く参加しています。比較的、選手寿命の長いスポーツと言えるかもしれません。ダウンヒルは瞬発力が求められる競技ですが、長い距離を走る持久力勝負の「クロスカントリー」、登坂力や読図力など総合力が試される「エンデューロ」など、種目ごとに求められる能力も異なります。
——湘南でもマウンテンバイクに乗れる場所はありますか。
葉山・横須賀エリアはファンライドにぴったりのエリアです。「マウンテンバイク=山で乗るもの」と考えられがちですが、湘南だって素晴らしい環境なんです。特に、葉山・横須賀エリアには、自然の中を走ることができる気持ちのいいコースがあります。

——1日中乗るものなのでしょうか?
1日がっちり乗らなくても、天気がいいから夕方からさっと出かけるのもありですし、昼前にはあがってくるような楽しみ方もできます。湘南ならば山から降りてきたら美味しいお店を覗いたり、海沿いを走るコースを組み合わせてみるのもいいでしょう。

——ルールやマナーがあれば教えてください。
覚えておきたいのは、ハイカーが優先であること。歩いている人がいたら、自転車を降りて道を譲り、挨拶をしましょう。まあ、当たり前のことを当たり前にすればOKです。始めたばかりで乗れる場所やルールが分からなければ、まずは近所のお店が主催するツアーに参加するのも手だと思います。
——初めの1台には、どんな自転車を選べばいいですか?
乗り始めてみないと、どんなバイクが自分に合っているのか、どんな乗り方がしたいのかはわかりません。まずは、ある程度万能な1台を手に入れるといいでしょう。山で乗る自転車は「トレイルバイク(マウンテンバイク)」と呼ばれるもの。お店で「登って下れる1台をください」と頼むのが一番わかりやすいと思います。値段は7、8万円くらいからあり、上はいくらでも。初めは10万円くらいのものを手に入れておけば、しばらくは楽しめると思います。

——パーツは自分でも交換できるのでしょうか?
初めはお店に任せるのがいいでしょう。パーツひとつ変えただけで明確に乗り味が変わるので、だんだんとパーツを変えるのが楽しくなるはずです。まずは信頼できる行きつけの自転車店を見つけることが、MTBを上手に楽しむための近道です。

——自転車以外に必要なギアはありますか?
怪我を防ぐためにも、ヘルメット、サングラス、膝パッド、グローブは着用しましょう。また、万一のトラブルに対応できるよう、空気入れとリペアキットも携行したほうがいいと思います。あとは、自転車に乗る時間以外も楽しめるよう、ランチやコーヒーセットを持っていくこともおすすめです。
永田さんは、ダウンヒル用とエンデューロ用を乗り分けている。油圧式のブレーキやサスペンションをはじめ、まるでメカのようなギミックが満載だ
ヘルメットの着用は必須。ロード用のものと比べると、後頭部までカバーする形になっている。サングラスは、日差しだけでなく、枝からも目を守ってくれる/シューズは専用のものがあるとベターだが、動きやすい運動靴でも構わない。プロテクターは最初のうちは使った方が無難だろう。グローブも着用したい
防寒用のシェル、空気入れ、リペアキットなども持っておきたい。バックパックは動きを妨げない体にフィットするものを。トレラン用のものも便利だ/せっかくなら、ライディングだけでなく、ゆっくりと自然も楽しみたい。ガスバーナーと鍋を持参し、山上でコーヒーを淹れる時間が永田さんのお気に入り

ENJOY MTB, ENJOY SHONAN!

●マーシュ(湘南台)
「湘南でMTBを始めるなら、ここでしょう。僕がMTBを始める時からお世話になっているお店です。お客さんの趣味嗜好が幅広いので、いろいろなMTBの楽しみ方を教えてもらえると思います」

Shop Data:
MARSH(マーシュ)
神奈川県藤沢市亀井野359-5
TEL. 0466-43-8389
営業時間:10:00-19:00
定休日:水曜日
www.marsh.co.jp

●グローブ鎌倉(鎌倉)
「販売だけじゃなく、MTBのレンタルがあります。鎌倉駅からも近いので、購入前にお試し乗りしたいならこちらへ。湘南で本格MTBが楽しめる明るい雰囲気の店舗です」

Shop Data:
GROVE鎌倉(グローブ)
神奈川県鎌倉市由比ヶ浜2-1-13
TEL. 0467-23-6667
営業時間:10:00-19:00
定休日:水曜日、木曜日 *祝祭日は営業
www.grovekamakura.com

●めしやっちゃん(逗子)
「山を走った後に新鮮な魚が食べられるのは、湘南ならではでしょう。僕がよく行くのは、逗子マリーナの近くにあるこちら。泥で汚れてしまっていても、外の席で食べさせてもらえます」

Shop Data:
めしやっちゃん
神奈川県逗子市小坪5-9-1
TEL. 0467-25-4302
営業時間:11:30-14:00(L.O)、17:00-20:00(L.O)
定休日:稀に水曜日
www.mesiyacchan.com

PROFILE

永田 隼也

自転車にハマっていた小学生の頃に、知り合いに連れていかれた山でマウンテンバイクの楽しさを知る。
15歳で本格的にダウンヒルレースに参戦。国内シリーズ参戦開始から1年未満のうちに、最上級クラスであるエリートクラスに昇格という快挙を果たす(当時最年少記録)。17歳からは海外のチームに所属し、スペインを拠点にワールドカップを中心に参戦してきた。
2015年には「オークリー」へ就職。プロライダーとサラリーマンの2束の草鞋を履き始め、 念願の全日本選手権ダウンヒルチャンピオンに輝いた。