PADDLER’S EYE 湘南の今を独自取材した特集と連載
FOOD BATON アルカレート 北村健さんのイタリア料理
海や山、自然に恵まれた湘南には、季節折々の旬な 食材が集まる。
その食の豊かさにひかれて、この地に暮らす男達は多い。
食のバトンがつなぐ、湘南のテーブルストーリーに耳を傾けてみよう。
今回、ながやの長屋偉太さんから、フードバトンを引き継ぐのは、「アルカレート」の北村健さんだ。
Photos : Pero Text : Paddler
宮大工に憧れ、イタリアンを
料理人に、この道を歩んだ理由を尋ねると、返ってくる答えは、食べることが好きだから、料理が楽しいから、家業が飲食店だったから、というあたりが相場だ。だが小田原の郊外で人気イタリアンレストラン「アルカレート」を営むオーナーシェフの北村さんの答えは一風変わっている。
「本当は宮大工になりたかったんですよ。祖父や親戚が宮大工をしていて、ノミを研いでいる姿が子供心にもかっこよくて」
北村さんは小田原生まれの小田原育ち。ご存知の通り、この戦国の都は難攻不落の名城をようする城下町だ。代々、城大工と呼ばれる匠達が腕をふるってきた。神社仏閣も多いから、宮大工の活躍の場も多かったのだろう。かつて市内には大工町という名前の一画もあったことからも、往時がしのばれる。北村さんの家系も、この匠の流れをくむのだろう。
「ですが、難しいんですよ。宮大工は…」
宮大工は日本伝統の木組みを駆使するために、綿密な計算と緻密な技術が必要とされる。「自分に宮大工は…」と、将来の道に悩んでいた高校生の時に、たまたまイタリアンレストランでアルバイトをすることに。
「刃物つながりではないでしょうけど、そこで料理が楽しいなと思ったんです」
もともとモノを作ることが好きだったこともあり、すっかり料理に目覚めてしまった。プロ用の鍋や中華鍋を母親に買ってもらい、バイト先で覚えた料理を家で振る舞うまでに。以後、調理学校に進学、6軒の店で修行をして、晴れて7年前に生まれ故郷に自分の“城”を構えたのだ。↙︎
料理人に、この道を歩んだ理由を尋ねると、返ってくる答えは、食べることが好きだから、料理が楽しいから、家業が飲食店だったから、というあたりが相場だ。だが小田原の郊外で人気イタリアンレストラン「アルカレート」を営むオーナーシェフの北村さんの答えは一風変わっている。
「本当は宮大工になりたかったんですよ。祖父や親戚が宮大工をしていて、ノミを研いでいる姿が子供心にもかっこよくて」
北村さんは小田原生まれの小田原育ち。ご存知の通り、この戦国の都は難攻不落の名城をようする城下町だ。代々、城大工と呼ばれる匠達が腕をふるってきた。神社仏閣も多いから、宮大工の活躍の場も多かったのだろう。かつて市内には大工町という名前の一画もあったことからも、往時がしのばれる。北村さんの家系も、この匠の流れをくむのだろう。
「ですが、難しいんですよ。宮大工は…」
宮大工は日本伝統の木組みを駆使するために、綿密な計算と緻密な技術が必要とされる。「自分に宮大工は…」と、将来の道に悩んでいた高校生の時に、たまたまイタリアンレストランでアルバイトをすることに。
「刃物つながりではないでしょうけど、そこで料理が楽しいなと思ったんです」
もともとモノを作ることが好きだったこともあり、すっかり料理に目覚めてしまった。プロ用の鍋や中華鍋を母親に買ってもらい、バイト先で覚えた料理を家で振る舞うまでに。以後、調理学校に進学、6軒の店で修行をして、晴れて7年前に生まれ故郷に自分の“城”を構えたのだ。↙︎
小田原発、北村流イタリアン
アルカレートのディナーは、シェフのおまかせ料理だ。初めにテーブルに現れる「前菜の盛り合わせ」を味わえば、北村さんの力量が察せられる。
この日のメニューは、ベシャメルのオーブン焼き、ブロッコリーとジャガイモのフリッタータ、レンコンのアリオリオ、ホウボウのカルパッチョ、真イカとネギのトマト煮、軍鶏のサラダ…。
野の恵み、海の幸、山の幸が繊細かつ豊かに盛られている。彩も鮮やかな料理は、どれも大胆かつ細やかに手が加えられた一品。国内のイタリアンレストランで修行しながら、本場で食べ歩くうちに、すっかりこの国の虜に。「人も料理もますます好きになった」といきついたのは、トスカーナ料理。「どこか小田原の自然に似ている」と感じたイタリア美食の地の味が、ピタリと舌に合った。とはいえ、北村さんはあくまでも、自分の“味”を追求する。
「イタリア料理を伝えたいという思いがありますから、奇をてらった創作はしません。ですが自分の表現はしたい」
その表現の一つが、できるだけ地元の食材にこだわることだ。野菜は近隣の契約農家から仕入れ、鮮魚は小田原漁港の朝取れだ。軍鶏にいたっては、知り合いに頼んで、自分が納得するサイズ、肉質に育ててもらっている。地産にこだわるのは、“味”だけではない“安心”のためだ。体を壊したことがある北村さんは、今でも食生活に人一倍気を遣っている。自分の目がいき届く納得した食べ物だけを、客に提供したい。素材を生かして、味付けもできるだけシンプルに。だからか北村さんの料理には、どこかやさしさがある。
「イタリア料理を食べたことがない地元のお年寄りの方が、店に来てくれるのがうれしいですね。『また、くるよ』って」
自分が納得する料理を提供するためには、努力を惜しまない。フォカッチャも手作り、バジルやイタリアンパセリなどのハーブも畑で自ら育てている。店の厨房を切り盛りするのは、北村さん一人。その労力と時間は、想像できよう。
厨房の奥で黙々と料理に向き合う北村さん。カウンター越しに見るその背中からは、宮大工にも負けない職人気質が漂う。
アルカレートのディナーは、シェフのおまかせ料理だ。初めにテーブルに現れる「前菜の盛り合わせ」を味わえば、北村さんの力量が察せられる。
この日のメニューは、ベシャメルのオーブン焼き、ブロッコリーとジャガイモのフリッタータ、レンコンのアリオリオ、ホウボウのカルパッチョ、真イカとネギのトマト煮、軍鶏のサラダ…。
野の恵み、海の幸、山の幸が繊細かつ豊かに盛られている。彩も鮮やかな料理は、どれも大胆かつ細やかに手が加えられた一品。国内のイタリアンレストランで修行しながら、本場で食べ歩くうちに、すっかりこの国の虜に。「人も料理もますます好きになった」といきついたのは、トスカーナ料理。「どこか小田原の自然に似ている」と感じたイタリア美食の地の味が、ピタリと舌に合った。とはいえ、北村さんはあくまでも、自分の“味”を追求する。
「イタリア料理を伝えたいという思いがありますから、奇をてらった創作はしません。ですが自分の表現はしたい」
その表現の一つが、できるだけ地元の食材にこだわることだ。野菜は近隣の契約農家から仕入れ、鮮魚は小田原漁港の朝取れだ。軍鶏にいたっては、知り合いに頼んで、自分が納得するサイズ、肉質に育ててもらっている。地産にこだわるのは、“味”だけではない“安心”のためだ。体を壊したことがある北村さんは、今でも食生活に人一倍気を遣っている。自分の目がいき届く納得した食べ物だけを、客に提供したい。素材を生かして、味付けもできるだけシンプルに。だからか北村さんの料理には、どこかやさしさがある。
「イタリア料理を食べたことがない地元のお年寄りの方が、店に来てくれるのがうれしいですね。『また、くるよ』って」
自分が納得する料理を提供するためには、努力を惜しまない。フォカッチャも手作り、バジルやイタリアンパセリなどのハーブも畑で自ら育てている。店の厨房を切り盛りするのは、北村さん一人。その労力と時間は、想像できよう。
厨房の奥で黙々と料理に向き合う北村さん。カウンター越しに見るその背中からは、宮大工にも負けない職人気質が漂う。
WHERE THE NEXT?
北村さんオススメの一軒は?
Pizzeria Italiana MARZO(小田原市栄町)
ピッツェリア・イタリアーナ・マルツォ
「1989年創業の老舗ピッツェリアです。オーナーシェフの松山さんは、当時から日本では珍しかった薪窯焼きのピザにこだわっていました」(北村)
北村さんオススメの一軒は?
Pizzeria Italiana MARZO(小田原市栄町)
ピッツェリア・イタリアーナ・マルツォ
「1989年創業の老舗ピッツェリアです。オーナーシェフの松山さんは、当時から日本では珍しかった薪窯焼きのピザにこだわっていました」(北村)
アルカレート