PADDLER’S EYE 湘南の今を独自取材した特集と連載

9 PIECES SENSE #001 コスガツヨシさん/cro-magnon 体が資本の湘南パーティ稼業につき。

人生で影響を受けた音楽、映画、本。9つの感性から、その人のイマを知る。
第1回セレクターは、cro-magnonのコスガツヨシさん。

2017.11.01 WED | UP

Illustrator:Kanta Yokoyama  Text:Tomohiro Okusa

O CORPO DE DENTRO

LOURENCO REBETEZ

アート・リンゼイプロデュースのロウレンソ・ヘベッチス。 Jディラ的世界にブラジルのリズムが融合。

NIGHT LIGHTS

GERRY MULLIGAN

バリトンサックス奏者のジェリー・マリガンによる63年録音のジャズ名盤。
 

HERE COMES THE SUN

NINA SIMONE

表題曲であるビートルズのカバー曲やボブ・ディラン「Just Like A Woman」をカバーしている。

99.9%

KAYTRANADA

ジ・インターネット作品など西海岸の人気トラックメーカー、 ケイトラナダのデビューアルバム。

SMOKE

Wayne Wang

ポール・オースター原作。 ハーベイ・カイテルの渋さが光る90年代の名作。
 

EYES WIDE SHUT

Stanley Kubrick

スタンリー・キューブリックの夢見心地なファンタジー。 「映画による異次元トリップを鮮烈に感じた」

育児の本

野口晴哉/全生社

1911年生まれ。のちに“野口整体”と呼ばれる整体操法を体系化。 著書も多数。
 

カナメの腰がイカレたら

岡島瑞徳/JICC出版局

師である野口晴哉の哲学を受け継ぎ、腰を中心とした健康的な生活を説いた。
 

禅マインド ビギナーズ・マインド

鈴木俊隆(著)松永太郎 (翻訳)/サンガ

アメリカの禅僧、鈴木俊隆による指導書。スティーブ・ジョブスも愛読していたという。
 

マサチューセッツ州ボストンにある名門音楽学校「バークリー音楽大学」で出会った仲間で結成されたcro-magnon。コスガツヨシさんはそのギタリストだ。

cro-magnonの活動と並行して、DJとしても活動している。特に湘南エリアでのDJが増えているようだ。先日、鎌倉・長谷のグッドメローズにてDJした際、ブラジルのアーティストLOURENCO REBETEZ『O CORPO DE DENTRO』をかけた。すると偶然にも、その日一緒にDJしていた橋本徹さんのレーベル「SUBURBIA」からリリースされているものだった。このレコードを購入したのは名古屋のピジョンレコードだ。渋谷のレーベルのレコードを、名古屋で買って、湘南でかけたら、1周してつながった。

「こうした偶発的な出会いって印象に残りますよね。気がつかずにかけていたので、橋本さんが喜んでいて“なんだろう?”と思いましたよ(笑)。昔はレコード屋さんの店内試聴というスタイルがありました。そのときに、店内のいる他のお客さんが“このベースやばい”とか“なにこの音!”とか曲に反応したりする。そういうささいな思い出も込めてかけたりします」

GERRY MULLIGAN『NIGHT LIGHTS』は、氏いわく「秋の夜長の濡れたジャズ」。A面は完璧でずっと聴いているというNINA SIMONE『HERE COMES THE SUN』もしっとりとしていて、DJユースということでいえば、一見、適していないように思える。しかし湘南でのDJが増えて、かける曲も変わってきたという。

「東京でDJをやるときは小さくてもパーティ的なものが多いですが、こちらではカフェやバーが多い。だから心積もりも変わりました。これまでは聴いていただけの曲も、DJで使うようになりましたね。フロアと自分の生活リズムがつながるようになった。境界線がなくなってしまったのかもしれません。住む場所が変わるとかなり変わりますよね」

高校1年生の1991〜98年までアメリカに留学していた。そんなときに出会った映画が95年の作品『SMOKE』だった。街角にあるタバコ店の店主の毎日、たんたんと流れるストーリー。そんな日常の中にもドラマがあり、1日として同じ日はない。
「今、自分が住んでいるアメリカが表現されている、と思えた映画が『SMOKE』でした。自分のアメリカ生活のアイデンティティみたいなものを感じます。とにかくセリフのひとつひとつがすごくクールなんです」

アメリカのリアルな風景が描かれた映画の一方で、今回、選んでくれた本は、精神と体の関係を見直すことができそうな日本的な3冊。昭和初期に「整体操法」をまとめるなど、人間本来の力を引き出して健康に導く活動を牽引していた野口晴哉さんによる『育児の本』、そして、そうとは知らずに読んだ『カナメの腰がイカレたら』の著者、岡島瑞徳は弟子であった。気がついたら「いわゆる野口整体にたどり着く」とコスガさんはいう。

「『育児の本』は、人間の中心感覚についての話や、自分の力でなんでも治せるという話がおもしろくて。これにならって、最近はとにかく深呼吸していますね。“背骨をいっぱいにする感じ”で息を吸うらしいです。野口さんの『風声明語』という名言集がありますが、読むとすごく気持ちが救われる内容なんです。でも実は整体の先生でした(笑)。整体自体の考え方が、そのまま人間の構え、生き方などの人生訓としてもうならせられる内容になっています」

何度もギックリ腰になっているというが、ギタリストとしては体が資本。もちろん体は精神とつながっている。

「この本の通り、腰はすべての“カナメ”ですよね。バンドを始めて20年くらい。なんとか全国に呼ばれるくらいの礎はできたけど、果たしてそれがゴールなのか。途中なのか、先があるのか。あるとしたら探すものなのか、来るものなのか。そんなことは永遠に考え続けることかもしれませんが、そうした思考の“カナメ”も得られる本です」

アメリカ留学時代から、東京を経て湘南へ。土地の影響を受けながら、その時代ごとの体と心が、音楽に趣味にと作用するのだろう。

PROFILE

コスガツヨシ -cro-magnon-

cro-magnon のギタリスト、DJ。1999年、Loop Junktion結成。2004年に活動停止後、インストバンドcro-magnonでも活動開始。コスガツヨシさんは、現在住まいにしている鎌倉を中心に個人でのライヴやDJなども精力的にこなしている。