PADDLER’S EYE 湘南の今を独自取材した特集と連載

FEATURE Living in the dream
ロン・ハーマン × 三根弘毅

新ショップに息づくふたりのメッセージ

長く続いていた雨が嘘のように晴れ渡った晩秋の一日、鎌倉・七里ガ浜に「RHC ロンハーマン」が誕生した。
オープンに際してロン・ハーマンさんが、カリフォルニアより来日。
太陽の日差しがきらめく七里ヶ浜の海を目前に、ロンハーマンプレジデント、
三根弘毅さんとふたりで新しい店への思いを語った。

2017.11.21 TUE | UP

Photos : Rai Shizuno  Text : Paddler

8年という歳月を経て、ようやく巡り会えたというこの場所。「RHC ロンハーマン七里ヶ浜店」は、深い絆で結ばれてきたロンさんと三根さんにとって、いわばひとつの集大成であり、これから先、さらに多くの人の日常に息づいてゆく「RHC ロンハーマン」という新たなストーリーの扉を開く場所のようだ。

――「ロンハーマン」の誕生から40年以上経ちますが、誕生のいきさつを教えてください。

ロン・ハーマンさん(以下、ロンさん):
僕は大企業に勤めるのが嫌いでね(笑)。何かもっと人とダイレクトに関わることがしたかったんだ。僕は、60年代にカリフォルニアのバークレーで大学時代を過ごし、卒業した時はカウンターカルチャーの真っ只中。仲間の多くはヒッピーみたいな暮らしをしていたけれど、僕は就職を選んだ。そして、大手広告代理店のJ.ウォルター・トンプソンに入社をしたんだ。でも、肌に合わなくてね。僕にとって快適な場所はどこだろう? と。そこでアパレルビジネスをしていた父の会社で働くことに。とは言え、最初の仕事はトラックの運転手さ(笑)。
ある日、トラックでパームスプリングスの店へ出かけた時、ちょうど立ち寄ったファミリーレストランの「ビッグボーイ」でハンバーガーを食べていると、道路の向こうに「売り店舗」という看板が目に飛び込んできた。すぐに公衆電話から不動産屋に連絡したんだ。で、店を購入したんだよ。その日にね(笑)。

――即決だったんですか? それはすごいですね。

ロンさん:
僕は「Instinct(本能)」と「Intuition(直感)」を、とても大切にしているんだ。それはビジネスにおけるカギだとも思っている。僕は自分のモノづくりやバイイングで、より多くの人を喜ばせたい。だけど、誰もその決断の良し悪しを予測することはできない。実際に見て、触れて、自分がどう感じるか? それにつきるんだよ。

――ロンさんが三根さんと出会い、そしてロンハーマンの日本出店を決心したのも、「本能」や「直感」だったんですか?

ロンさん:
僕がKokiと出会ったのは、彼が仕事仲間と一緒にLAに商談にやってきた時。サンプルを持ち込み、パートナーシップを交渉してきたんだ。でも、僕の答えは「NO」。彼らの様子、セレクトしたものに心を動かされなかったんだ。すると次の日、Kokiがひとりでオフィスにやって来たんだ。その時の彼も今のように控えめで穏やかだった。そして僕に「ロンハーマンを、日本で自分の生涯をかけてやりたい」と言ってきたんだ。その時、僕は彼のハートと魂を感じたんだ。僕らには、言語の壁こそあったが、気持ちにおける壁は一切なかった。僕は思わず彼と握手をしたよ。それが僕にとって彼との正式なコントラクト。この日からKokiと「ファミリー」のような絆が始まったのさ。↙︎
――三根さんは、世界中であらゆるものを見てきたと思うのですが、なぜその中で、ロンハーマンを選んだのですか?

三根さん:
仕事で世界中の店を見て、多くのモード、すばらしいものに触れてきましたが、なぜか一番面白くて、心惹かれるものがロンハーマンだったんです。最後に行き着く場所はここだ、と確信していました。いつかこんな店をやりたい、と思っていたんです。

――どのような点に惹かれたのでしょうか?

三根さん:
ファッションというのは、ブランドで着飾り、外で見せびらかして「俺ってかっこいいでしょう?」ということではなく、装う人の中身が滲み出るものだと思うんです。いくらお洒落をし、身なりを整えたところで、中身がきちんとしていなければ、決してかっこよくない。それを表現できるのがロンハーマンだ、と感じたんです。ファッションはブランド力ではない。ロンさんはいつも「ファッションは生活の中の一部であり、ライフスタイルそのものだ」と言っていますが、まさにその通りなのです。当時はロンさんを「ファミリー」だなんて呼べなかった。僕にとっては「神様」みたいな存在だったから(笑)


生きてきた時代や国籍こそ違うが、おふたりには似通う点が多い。某大手百貨店で、トップバイヤーとして活躍してきた三根さんもまた、華やかな地位を後に、ロンハーマンという冒険に挑んだひとり。このふたりが挑戦する「RHC ローハマン」、「七里ヶ浜店」とは?


――「ロンハーマン」と「RHC ロンハーマン」の違いは何ですか?

三根さん:
ロンハーマンをスタートした時に、僕らの心の根底で大切にしていたもの、それがRHCだと言えます。RHCの「C」は、「カリフォルニア」でもあり、「コア」の「C」でもあるんです。僕らはロンハーマンの「コア」な部分をRHCに反映させています。商品では、こだわりの部分をさらに大切にしています。ビンテージやアーティストによる一点ものなど、量産できないもの、背景に深いストーリーがあるものなど、画一的ではない自分らしいスタイルを楽しめるラインナップになっています。

ロンさん:
そもそも僕らは、このロンハーマンを多店舗で展開したいとは思ってはいなかった。だから、そのDNAを抱えた別のショップをつくりたいと考えていたんだ。ロンハーマンが、世界に視野を広げた「グローバル」なブランドに対し、RHCはとても「ローカル」で地域に根ざしてゆくブランド。地域のコミュニティに馴染み、その一部になってゆくことを大切にしたライフスタイルブランドなんです。まさにこの七里ヶ浜店も、ここで暮らし、仕事をする人たち、余暇を楽しむ人たちのショップにしたい。
RHCの中の「C」には、「コミュニティ」、「カジュアル」、「クリエイティブ」の意味も含まれている。そして最も大切な要素は「チェンジ」。ファッションも人々も、そして世界も日々変化していく。RHCは、地域との関係性を大切にしながらこの変化を柔軟に受け入れ、発信してゆきたいんだ。↙︎
――七里ヶ浜店は、他の「RHC」の店舗と違いはがあるのでしょうか?

三根さん:
本当はロンハーマンの第1号店を、海のあるこのエリアにオープンさせたかったんです。だから、今とても幸せです。海の前だからビーチウエアを売る、ということではなく、お客さんたちに店にきてもらい、たとえ買い物をしなくとも元気になって帰ってもらいたい。それがスタッフとのダイアログからであったり、空間からであったり。ものを売ることだけでなく、それこそがライフスタイルビジネスだと考えます。そんな側面を、ここでさらに充実させたいです。

ロンさん:
僕はずっと海の近くで暮らし、サーフィンをし、オーセンティック(普遍的)なライフスタイルが与えてくれる「ハピネス」を提案してきた。海は人々に「謙虚さ」を、ビーチは「感謝の気持ち」を与えてくれる。僕らはずっと、このRHCを通してこの「ハピネス」、「謙虚さ」、「感謝の気持ち」を地域の人たちと分かち合いたい、と思ってきた。だから、日本でこの海の側に出店でき、ようやく夢が叶ったんだ。ここは、僕の地元のムードにとても似ていて、HOMEのようにも感じているよ。

ロンハーマンのライフスタイルの本質、RHCの世界観が集約された七里ヶ浜店。これからこの店舗が、湘南でどのようにローカライズされてゆくかがとても楽しみだ。最後におふたりが、PADDLERの読者にメッセージを残してくれた。

ロンさん:
ここで買い物をする人は、きっとRHC独特のライフスタイルをリアルに感じるだろう。ここにはカリフォルニアで暮らしてきた僕の生き方が息づき、そしてロンハーマンの本質を熟知したKokiの生き方もまた息づいている。みんなにも自分らしい生き方、ライフスタイルを大切にし、それらを夢見るだけでなく、ぜひその夢の中に生きてほしいーー「Living in the dream」。

三根さん:
僕は日頃から「有ることが難しい=滅多にない特別なこと」という意味の「ありがとう」という言葉をとても大切にしています。ロンハーマンでは、スタッフたちもこの意味をよく理解し、使っています。今、こうしてこの店を出店させてもらえたことに対して、僕は心から「ありがとうございます」と感じています。みなさんにその感謝の気持ちを伝えたい。

ロンさん:
よし、明日の朝はここの海に入らせてもらおう! カリフォルニアでいつもしているように、サーフボードに乗りながらのボードミーティングだね(笑)。君も来る?

LOCATION INFORMATION

RHC ロンハーマン七里ヶ浜店

神奈川県鎌倉市七里ガ浜 1-1-1
WEEKEND HOUSE ALLEY 1F

TEL. 0467-55-9761
OPEN. 11:00 ~ 19:30
CLOSE. 不定休
http://rhc.ronherman.jp/

国道134号線沿いで、目の前は湘南屈指のクラシックなサーフスポットという好立地。太陽の光が差し込む明るい店内には、海を眺めながら会話を楽しみくつろげるラウンジや暖炉などがあり、ゆったりとリラックスできる空間になっている。今後、地元の方にも楽しんでいただけるイベントなども開催していく予定。

PROFILE

ロン・ハーマン
ロサンゼルス「FRED SEGAL」のバイヤーとして同店を成功に導く。
その後、1976年に自身の名前を冠したスペシャリティストア「Ron Herman」をメルローズアベニューにオープンした。
その独自の審美眼にはファンが多く、数多くのセレブリティからも支持されている。

三根弘毅
サザビーリーグ リトルリーグカンパニー プレジデント。
大学卒業後、大手百貨店に入社し、国内外のブランド買い付けをするバイヤーとして活躍。
2008年にサザビーリーグに入社、「Ron Herman」を初めて本国以外での展開を成功させた。
その後、ロン・ハーマンとの協同により「Ron Herman」から誕生したコンセプトストア「RHC Ron Herman」を2013年にオープンさせた。