PADDLER’S EYE 湘南の今を独自取材した特集と連載

FEATURE PICK UP PEOPLE 03【後編】
by TAYLOR STITCH
石川拳大さん
既存の枠を超えて……。未知なる世界へ挑戦する新感覚サーファー

昨年、日本初上陸を果たし、鎌倉に海外初の旗艦店を構えたテイラー スティッチ。
2008年にサンフランシスコで3人の若者が創業した新しいアパレルブランドだが、
あくまでも本物こだわる物作りの姿勢から、口うるさい西海岸のファッションフリークから高い評価を受けている。
そんな物作りに情熱を燃やすテイラー ティッチが、さまざまなフィールドから同じ志を抱く人物をインタビュー。
3人目は、企業アスリートとして世界で戦うサーファー、石川拳大さん。

>>石川拳大さん【前編】はこちらから

Photos : Taisuke Yokoyama  Text : Paddler

お気に入りのシャツ「ジャック」。「デニムは肌触りもよく着心地がいいですね」

サーファーの新しい“生き方”をつくりたい

--石川さんは、プロではなく企業アスリートの道を選んだりと、サーファーとして既存の枠組みに縛られない生き方をしています。何かターニングポイントがあったのですか?

高校生のときに、4年間オーストラリアのゴールドコーストに留学していたのですが、そこでの影響が大きかったですね。英語が話せるようになりたい。それなら自分のコミュニケーションツールとして強くあるサーフィンが発達している地域がいいと、選んだんです。日本だと「サーファーです」と言うと、サーファーだけのコミュニティしかできなかったりするんですけど、オーストラリアではサーファー以外の人も、すごく身近な存在になってくれます。ちゃんと文化に根差しているんですね。それと教育環境が大きく違います。カリキュラムの中に、サーフィンをはじめマリンスポーツ全般がある。スポーツだけてなくカメラやアート、勉強でも飛び級できるシステムがある。一人ひとりが自分らしさを発揮するための教育なんです。こういうところから、個性が生まれるんだなと思いました。

--なるほど、ですが、日本でもオーストラリアでも、サーフィンは同じではないですか?

いや、オーストラリアへ行って、サーフィンに対する価値観がガラッと変わりました。僕は(コンテスト用の)パフォーマンスボードばかり乗っていたのですが、同年代の子たちはいろんなサーフボードで楽しんでいました。70年代、80年代のクラシックなサーフボードや、前半で話をした木製のアライアとか。そういう光景を目にして、サーフィンはどんなボードに乗ってもいいんだ。海の中では自由に楽しめばいいんだ、と思いました。サーフィンの本当の大切さを忘れていたんですね。それが今の活動にもつながっています。

--目下の目標は、やはり東京オリンピックへの出場ですか?

東京オリンピックはもちろん視野に入れています。ですが、終われば過ぎ去ってしまうものなので、それよりも僕は前と後がすごく大事だと考えています。出られたらそれに越したことはありませんが、道のりにすぎません。ただ出るだけでは何も変わらない。

--道のりにすぎないと言うことは、その先にゴールがある?

自分の中では、ゴールはないなと思っています。ゴールと言うと、フィニッシュする感じになってしまいますから。だけど、強いて今の僕のゴールを言えば、大きいこと言うようですが、日本の社会を変えたいなと思っています。オーストラリアから日本に帰ってきて、この国には自分らしく個性のある生き方ができる環境がないなと思いました。それを変えるためには何なんだろうなと考えたときに、生きる根源である教育だと思いました。↙︎
現在は海外の大会をメインに世界ツアーを回る。今シーズンは春と夏に、南アフリカへ渡った
服もシューズもクルマも、汚れても味が出るモノが好きと言う。コンバースも大のお気に入り
--そのために何か具体的な活動をされているのですか?

まずは地元に小さな学校をつくりたいですね。サーフライダーファウンデーションジャパンという国際環境NGOと協力して、プロジェクトをすすめています。湘南は、サーフィンはもちろんマリンスポーツや海洋学、ライフセービングなど、海に関することをもっと学べるエリアなので、海と生きる街を目指せば地域がもっと伸びると思います。海に根差した活動をしているアーティストやミュージシャンにも参加してもらい、みんなと同じ流れに乗って生きなくても、自由に生きる、自分らしく生きるライフタイルあることを子どもたちが知る場所になればと考えています。

--なるほど、楽しみなプロジェクトですね。石川さんはファッションにもこだわりがあるそうですが、好きなスタイルとかはありますか?

僕は基本的に汚れても味の出るようなモノが好きです。服もそうですし、サスティナブルというか、ずっと着られるようなものがいいですね。コンバースが大好きなんすが、汚れて味が出ますよね。クルマも、ぶつかっても、逆にそれが味になっていたり、年を追うごとに一緒に味が出てくるようなものが好きです。テイラー スティッチはまさしくそうですね。それに着る場所を選ばないのがいい。このシャツとかも海から上がった後に、チノパンを履けば、そのまま会社に行ける。

--最後にお聞きしたいのですが、石川さんの座右の銘は?

「一期一会」ですね。今この場にいるのもご縁で出会った方々なので、一瞬一瞬が大切だなと思っています。人がつなげてくれるパワーはすごい。僕も海外へ遠征に行くときは関係者と一緒でも、絶対空港からはひとりで出て、現地の人とつながりながら行動します。そうすると、本当に大きな輪になって、帰るときにはファミリーみたいな状態になっていることも。そんな人との縁が、僕の中では一番の財産ですね。
「テイラー スティッチは、街でも海でも場所を選ばないで着られるのがいいですね」
「サーフィンは自分のすべてではありません。生きるための大きなツールです」
スケボーで海に行くことも。何とこのデッキは、古いまな板を自分でリストアしたもの

TAYLOR STITCHとは?

2008年、サンフランシスコで3人の若者によってスタートしたアパレルブランド。3人ともサーフィンやスケートボード、フライフィッシングやバイクなどを楽しみ、街とフィールド、シームレスに着ることができる服づくりをコンセプトにしている。あくことなく本物を追求する姿勢は、職人気質そのもの。服好きにとってはこたえられない“こだわり”が満載している。2017年に、海外店舗の1号店として、七里ヶ浜にコンセプトショップがオープン。ラインナップをチェックできるのは、日本では鎌倉店のみ。ぜひ、チェックを!

TAYLOR STITCH 鎌倉店
神奈川県鎌倉市七里ガ浜1-1-1 [ MAP ]
TEL. 0120-776-560
OPEN. 10:00 ~ 19:00 

→[Taylor Stitch(テイラースティッチ)]WEBサイトはこちらから→

PROFILE

石川拳大

サーファー(企業アスリート)

1994年生まれ、茅ヶ崎市在住。4歳からサーフィンを始める。中学生で世界大会に参戦。高校時代はオーストラリア、ゴールドコーストに留学。帰国後は神奈川大学に進学。サーフィンサークルを立ち上げ、全日本大会で2年連続優勝を飾る。2017年に2020年東京五輪の日本代表強化指定選手に選出される。現在は日本情報通信の企業アスリートとして、会社勤めをしながら海外を転戦している。