PADDLER’S EYE 湘南の今を独自取材した特集と連載

FEATURE PICK UP PEOPLE 02【後編】
by TAYLOR STITCH
軽部京介さん
旅から写真、映画まで。話題のクリエイティブ・ヘアスタイリスト

テイラー スティッチのスピリットは、どこまでも“本物”を追求すること。
そのために“こだわり”と“情熱”は決していとわない。
さまざまなフィールドには、同じ志を持って活躍する男たちがいる。
彼らを突き動かす原動力は?そして、何を求めているのか?
ここでは気になるひとりをピックアップして、その思いを2回に分けて語ってもらう。
きっと、そこにはテイラー スティッチとつながる何かがあるはずだ。
ふたり目は、へアスタリストという枠を超えてユニークな活動を続ける軽部京介さん。

>>軽部京介さん【前編】はこちらから

Photos : Taisuke Yokoyama  Text : Paddler

キャンピングカー「エアストリーム」を改造した、軽部さんのヘアサロン「HAIR CALIFORNIA」の前で
--前編のお話では、軽部さんのヘアカットへのこだわりが強く伝わってきました。高校卒業後、美容師の専門学校に進学したとのことですが、専門学校を卒業して念願かなってこの道に進んだのですね。

いや、実は美容師にはならなかったんですよ。19歳のときにサーフィンと出会って、すっかりのめりこんでしまい……。「美容師なんてやっている場合ではない。サーフィンだ!」と、サーフショップに就職してしまったんです(笑)。サーフィン漬けの毎日になって、それはそれでよかったんですが1年半で仕事をやめてしまいました。人の下で働くのが、どうにも性に合わなかった。それに当たり前ですが、サーフィン業界の人としか話ができない……。すごく狭い世界だな、と。これが本当にやりたいことか? と、自問したんです。やりたくないことをして、生きていくのは本当につらいじゃないですか。そこで自分なりに突きつめていき残った仕事が、ヘアカットでした。美容師でしたら、いろいろなお客さんと接することができて、世界も広がっていく。その中には、サーファーの方もいるかもしれません。それで自分が好きなサーフィンとヘアカットをひとつにした店をつくりたいと、具体的に考えるようになって、6年間、美容師としての下積みをして、2011年にようやく自分の店「HAIR CALIFORNIA」をオープンしました。

--軽部さんのヘアサロンからは“サーフィン”の雰囲気が漂っていますが、その理由がわかりました。

サーフショップに勤めているときに、カリフォルニアからサーフボードを輸入する仕事をしていました。それでサーフィンを通して、カリフォルニアのサーフカルチャーの魅力にひかれるようになりました。カリフォルニアの高感度なサーファーは、波乗りもそうですが、ファッションにも独特のこだわりがある。さりげなくヴィンテージを取り入れたり、どこか都会的なかっこよさがあるんです。ヘアスタイルもそうですね。

--軽部さんはいろいとろクリエイティブな活動をされていますが、その一つが「CUT BACK TO CALIFORNIA」ですね。

1965年のサーフィン映画で『The Endless Summer』という名作があります。ふたりのアメリカ人の若者が、サーフボードを持って、世界中の波を求めて旅をするストーリー。これに感動して僕もチャレンジしてみたいと。で、思いついたのが、ハサミを持って世界中のサーフスポットを巡ること。地元のサーファーのヘアカットをする代わりに、サーフボードを貸してもらってサーフィンをする。人に喜んでもらって世界の波に乗れるなんて最高だなと。それと自分のスタイルブックをつくることも目的でした。僕は美容室に置いてある雑誌のヘアカタログが嫌い。ヘアカタログをお客さんに見せるくらいなら、自分で作ったヘアスタイルを見せたいと思っていたんです。サーファーは、キメすぎずにナチュラルでかっこいい。↙︎
ハサミを手に海外へサーフトリップに。有名なプロサーファーのヘアカットを (C) John Hook
軽部さんのヘアサロンがある藤沢の8ホテル。仕事の合間にラウンジで休憩することも

自ら楽しむことがクリエイティブを生む

--とてもユニークなプロジェクトですね。

友人の映像作家に話をしたら、「8mmカメラで撮影してドキュメンタリー映画をつくろう」となったんです。それでキャンピングカーを借りて、2週間、ヘアカットとサーフィンの旅をカリフォルニアでしました。アメリカのメディア関係者の方にも注目していただき有名なサーフィン雑誌で取り上げていただいたり、ブラジルの映画祭からも招待され、ベストアイデア賞を獲得しました。帰国してからは、写真展も開催して大きな反響もいただきました。2014年には、オーストラリアにも旅をして、「CUT BACK TO AUSTRALIA」も実行しました。今度はヨーロッパや日本をヘアカット&サーフトリップしてみたいですね。

--軽部さんは、どんなファッションが好きですか?

シンプルなデザインが好きですね。最近特に感じているんですが、あまり見た目で主張したくないんです。街に溶け込んでいたいというか。自分はどうだとか主張が服に表れるファッションが多いじゃないですか。例えば、レゲエが好きだったらレゲエっぽい服だったり、ダンサーだったらダンサーっぽいかっこうをしていたりとか。僕も前まではサーファーっぽい服を着たいとかありましたが(笑)。だから、今はテイラー スティッチがしっくりくるんです。すごくベーシックでオーセンティックな服づくりをしているじゃないですか。僕はそういうものが好きなので。海あがりにも街でもさらりとシームレスに着られる。つくりがしっかりしていて体になじむので、着ていてうれしい気持ちになります。仕事でも着ているのですが、汚れてしまうのがもったいない(笑)。

--最後に軽部さんの人生のモットーを教えてください。

「CONTENTMENT」、「JOY」、「ENJOYMENT」の三つです。「満足」、「喜び」、「楽しみ」という意味ですね。すごく大それた夢や希望はありませんが、まずは自分がウキウキしないと何事も始まらない。満足感や喜びを得たり、楽しかったりすると、ウキウキしていられるじゃないですか。ただ単にそれだけです。今、自分のベースとなるものがすべてわかりました。サーフィンができて、おじいちゃんになってもヘアカットしていて、家族と仲よくして友達と遊んだりとか、いつもウキウキしていたいですね。
ヘアカット&サーフィンのカリフォルニア・トリップの模様は短編映画に。映画賞を獲得
ヘアサロンに飾ってある軽部さんのモットー。「すべてはウキウキから始まります」
軽部さんのお気に入りが「The Slim Chino」。「丈夫なのに動きやすいので、仕事でもはいています」

TAYLOR STITCHとは?

2008年、サンフランシスコで3人の若者によってスタートしたアパレルブランド。3人ともサーフィンやスケートボード、フライフィッシングやバイクなどを楽しみ、街とフィールド、シームレスに着ることができる服づくりをコンセプトにしている。あくことなく本物を追求する姿勢は、職人気質そのもの。服好きにとってはこたえられない“こだわり”が満載している。2017年に、海外店舗の1号店として、七里ヶ浜にコンセプトショップがオープン。ラインナップをチェックできるのは、日本では鎌倉店のみ。ぜひ、チェックを!

TAYLOR STITCH 鎌倉店
神奈川県鎌倉市七里ガ浜1-1-1 [ MAP ]
TEL. 0120-776-560
OPEN. 10:00 ~ 19:00 

→[Taylor Stitch(テイラースティッチ)]WEBサイトはこちらから→

PROFILE

軽部京介

Kyosuke Karube
ヘアカッター

1981年年生まれ。都会的でありながらサーフィンやウエストのカルチャーを感じさせるヘアサロン「HAIR CALIFORNIA」を、湘南に構える。海外の有名プロサーファーのヘアカットをしながらサーフトリップをする「CUT BACK TO CALIFORNIA」 などのユニークなプロジェクトも行う。そのトリップのドキュメンタリーフィルムはブラジル映画祭で賞を獲得。写真展を開催するなどクリエイティブな活動も精力的に取り組み、さまざまなメディアから注目を集めている