PADDLER’S EYE 湘南の今を独自取材した特集と連載

HEARTS&CRAFT #005 JONAS GLASS VISION
By JONAS KAKU
「ガラスに水を見る」ヨーナスさんのビジョン

スウェーデンに生まれ、鎌倉で育ち、沖縄での修業時代を経て、
七里ガ浜にアトリエ兼ショップ『JONAS GLASS VISION』を構えるガラス作家の賀来ヨーナスさん。
スケートボードとサーフィンという自分にインスピレーションを与えてくれた世界と
ガラスの世界を繋げ、作品を生み出す。

2018.03.29 THU | UP

Photos : Mike Lau  Text: Paddler

球体ガラスの中の波

海面からせり上がった波がチューブを巻こうとしている瞬間が、手のひらサイズほどのガラスの球体の中に閉じ込められている。じっと見ていると、今にも動き出しそうなほどに、その波は生き生きとしている。

青一色ではない海の色。
光が入ることによって水の色は常に変化する。そして、海は常に動いている。

沖で発生した風がつくりだした海面のざわめきは、しだいにうねりとなって岸へと押し寄せる。それが海底の地形にぶつかることで、エネルギーがせりあがり、波となって崩れて役目を終えるのだが、その波が波としての存在感を示す一瞬のはかない世界がガラスの中で時を止めて存在している、というわけだ。波ならではのエネルギーの動きは、ガラスという素材だからこそできる表現だ。

「熱され、溶けた、まるで水のようなガラスが成形されて、冷えて固体になる。とても流動的な素材ではあるのですが、形が決まるともう動かない、不思議な素材なんです。形にするまで直接手に触れることができないという点に、とても魅力を感じています」

鎌倉・七里ケ浜で『JONAS GLASS VISION』を主宰するガラス作家のヨーナスさんは、ガラスに魅せられて20数年、この素材に向きあって作品をつくり続けている。波をモチーフにした作品はガラスを学び始めた頃からいつかつくろうと思っていたそうだ。

スウェーデンで生まれ、2歳の時に日本にやってきて以来、鎌倉・七里ケ浜。海に触れ、スケートボードに夢中になって少年時代を過ごしてきた。小学5年生の頃にはサーフショップ『オーシャングライド』のスポンサードを受けてコンテストに出るように。

「スケボーやサーフィンは、『なにか創作しよう』っていう気持ちにさせてくれた存在だから、何をつくるにしても繋げたいと思っていたんです。それに、ガラスと向き合う感覚ってサーフィンやスケボーに似ているんですよ。ガラスっていう素材は常に動いているものだから、サーフィンやスケボーのように瞬間瞬間で判断していくことが必要なんです」

ヨーナスさんが作る波の作品は、表面的な波の姿ではなく、水中世界の波の動きまでもが表現されている。これは、海に入って少しサーフィンをしたからといって見えるものではない。技術面においても、あるレベルに達していないと見ることのできない波の世界だ。

「サーフィンに関しては遅咲きなんです。子どもの頃からずっと触れてはいたんですけど、20歳を過ぎた頃に弟子入りしたガラス工房があった沖縄の海が、本当のサーフィンの世界を見せてくれたんです。沖縄の波はリーフの外側で割れるんですけど、ものすごく浅いし、クリアウォーターだから、テイクオフする時に珊瑚がくっきりと見えるんです。そして波がどういう動きをしているかということが、本当によくわかるんですよ。湘南の海では気づくことができなかった、サーフィンで自然と一体になる感覚を沖縄の海が教えてくれたんです」↙︎
沖縄から鎌倉へ

ガラスの技法をマスターしようと入学した『東京ガラス工芸社』の卒業を控えていた時に、沖縄に工房を構えていたガラス作家・豊島ルリ子さんのアトリエでの仕事の話を聞き、沖縄へ飛んだ。「沖縄には海もあるから楽しみ」と思っていたのだが、工房は海から遠い山の上にあり、師匠は海に出かける習慣を持たない、ガラス一筋の女性だった。

「朝から晩まで作業もあったし、サーフィンなんてできませんでしたよ。それで、僕も考えました。ある日、師匠を海につれていったんです。最初は浮き輪に乗せて、リーフの外側の波を見せて……。そうしたら、『こんな世界もあるんだ』って感動した様子で、師匠も一緒にサーフィンもやるようになったんです(笑)」

その後、豊島さんのオーストラリア移住をきっかけに、工房を引き継ぐ形で自身の工房「ガラス工房ヴェルムランド」を構えることに。

そして2008年に地元・鎌倉に戻ってきて、現在の『JONAS GLASS VISION』をスタートさせる。幼い頃から身近にあったものの、沖縄に行くことで気づくことができた「海」をモチーフの核として作品をつくり続けるヨーナスさん。表面的ではない、本質を知っている者にしか表現できない世界。それは作品にしっかりと現れている。

「かっこつけた言い方ですけど、芸術家というものは、人が真似できないものをつくらないといけないと思うんです。技術を学んだらできる、っていうことではない、自分だけのものをつくりたいんです。唯一無二のものをつくっていきたいですね」。

PROFILE

JONAS GLASS VISION

ガラス作家・賀来ヨーナスさんのアトリエ兼ショップ。
ショップスペースには、吹きガラスの技法を軸にしたヨーナスさんの美しいガラス作品が並ぶ。
アトリエでは「吹きガラス体験」をはじめとした様々な体験教室も実施している。
また、グラスやオブジェ、思い出の写真を封じ込めたガラスブロックやパネルなど、
他にはない特別なギフトやインテリアオブジェを求めて、オリジナルオーダーをしにやってくる顧客も多い。