PADDLER’S EYE 湘南の今を独自取材した特集と連載

HEARTS&CRAFT #004 core
By MAKOTO ISHIWATA
スケートボードとアート

カラフルな縞模様はすべてスケートボードデッキ内部の模様。
隠れた美しい素材に魅せられて、スケートボードからプロダクトを生み続ける作家、
石渡誠さんの逗子のスタジオへ。

2018.02.22 THU | UP

Photos : Rai Shizuno  Text: Paddler

素材との出会い

スケートボードの廃デッキを用いてプロダクトをつくる逗子在住の作家・石渡誠さん。
「core」名義で現在の制作活動をする以前は、現代美術家として活動していた。
「つくっていたのは『観客が真空パックになれる装置』とかですね」
その作品「VACUUM PACKING!」で2003年度の「キリンアートアワード」で準グランプリを受賞。
翌年に開館し、当時日本中の注目を集めた『金沢21世紀美術館』のオープニング展に招かれることになる。
「もちろん嬉しかったんですけど、僕の作品は大きな装置だったから売れる訳でもなく、当時の正直な思いとしては『日本で一番注目されている美術館で作品を出してもこんなに金にならないのか』
というものでした」

20歳頃から現代美術家として活動してきた石渡さんがアート以外にずっと続けてきたものにスケートボードがあった。小学5年生の時にファースト・デッキを手にして以来、彼のスケートボード・ライフは始まる。
「当時は“光GENJI”ブームで、みんなローラースケートをやってましたね(笑)。でも、それは違うなと思ってお年玉でキャバレロの板を買ったんですよ」
趣味や遊びというものは、成長の過程や環境の変化によって離れてしまう人が少なくないのだが、石渡さんにとってスケートボードとアートは生活がどんな状況になったとしても離れたくないものだった。その2つを組み合わせて自身の生活を1本化する方法を模索していった。

ある日、1枚の古いスケートボードを手にしていた時の事、ふと思い立ってデッキテープを剥がし、半分にカットしてみると、デッキ断面の美しい模様が目に飛び込んできた。
外側は傷だらけでくすんだ色をしているのに、内側はカラフルな縞模様になっていたのだ。
「岩山で手にした石を割ったらきれいな宝石が出てきた、みたいな感じでしょうか。驚くほどに美しい断面だったんです」
core(芯、核の意)という名はこのデッキ内部の美しさを見せたいという思いでつけたられた。↙︎
この“スケートボードデッキのコアの部分”との衝撃的な出会いが、彼を前に進ませた。
デッキを何枚も圧着して塊を作り、そこから形を削りだしていくという手法を編み出す。
家にあった古デッキをすべて加工し終えると、今度は友人、次に逗子近郊のスケートショップ、さらには東京のスケートショップなども巡り、古デッキを集めてはデッキテープを剥がし、圧着するという作業を繰り返し、作品づくりのための素材をつくり続けた。
廃デッキが素材というと、「リサイクル」という言葉が浮かんでくるのだが、石渡さんはこう話す。
「リサイクル精神が先にあったわけじゃないんですよね。スケートボードでしかつくれないものをつくりたいだけなんです」

石渡さんがつくるのは、通常の合板圧着では得ることのできない、スケートボードデッキ特有のラインがあるからこその美しい模様が活かされたアクセサリーやオブジェ、『タグチクラフテック』とのコラボレーションによるスピーカー、そして、ノーズとテール部分を繋げてつくったスツールなどだ。スツールはデッキの持ち主だったスケーターがつけた傷痕や、ステッカーなどがそのまま活かされ、一つとして同じものは存在しない。どのプロダクトもスケートボードからしか生まれない個性に溢れている。
「世界中でスケートボードの廃デッキを使ったプロダクトが見られますけど、自分には絶対に負けないクオリティがあると思っています」
core作品を見た時に感じるハッとするような美しさは、彼のモノづくりに対しての自信の現れなのだと納得した。

逗子のスケーター

小学5年生の時からずっとスケートボード、ずっと逗子暮らし。この町から出ようと思ったこともない。この逗子で育ったということが、スケートボードをやり続けた理由にもなった。
「湘南エリアの中でも逗子のスケーターっていうのは海に出ないんですよ。波がないから。隣の鎌倉や葉山のスケーターは大きくなると一度サーフィンにハマって、サーファーになることが多いんです。でも逗子のスケーターはずっとスケボーだけやり続ける」
生活になくてはならない存在である、スケートボードとアートを一本化することに成功した石渡さん。この先にイメージしているプランがいくつもあるという。
アトリエの片隅には、廃デッキから剥がされたデッキテープとウィールが大量に積まれている。
どうやらこれらが新作の素材となるようだ。今度はどんなものに姿を変えていくのだろう。

INFORMATION

core

アーティスト、石渡誠さんのプロダクト・ブランド。
現代美術家としてキャリアをスタートさせた石渡さんがスケートボードの廃デッキを素材として、様々なプロダクトを生み出している。