PADDLER’S EYE 湘南の今を独自取材した特集と連載

RIDE ON #004 Daisuke Wada
1942 Harley Davidson WLA
オーナー:和田大輔さん

「うちは爺さんの代からオトキチ家族なんですよ」
逗子の老舗鮮魚店、魚平商店の三代目店主、和田大輔さんの我が家のバイクストーリー。

2018.01.09 TUE | UP

Photos : Tomohiro Momo  Text : Riku Emoto

ガレージは和田さんのバイクライフを象徴する名車、道具類、オリジナルパーツ、小物等で埋め尽くされている
代々受け継がれる、あの名車

イギリス製のトライアンフはマーロン・ブランドの『乱暴者』やスティーブ・マックイーンの『大脱走』など数多くの映画に登場し、バイクファンのみならず多くの映画ファンの記憶に残る世界的な名車だ。そんなオートバイを間近に見て育ったという和田さんにインタビューをすることに。

「僕が物心がついた頃には、親父が仕事の合間を見つけては、スピード・ツインやボンネビルをいじっていた。そんな姿を見ながら育ったので、子供心に大人の男の人ってオートバイをいじるものなんだと思っていました」
逗子にある自宅のガレージには、父から譲り受けた1953年型500ccスピード・ツインやトライアンフの代名詞として、旧車から現行車に至るまで、タンクのエンブレムを飾るボンネビルの1959年型650ccやハーレーの軍用車WLA、旧車として人気絶頂のカワサキZ1から世界最強のオートバイと知られる最新型のカワサキH2等、10台程のオートバイが走行可能な状態で、出番を待っている。

そんなオートバイの中でもとりわけ和田さんのオートバイへの情熱の源にして、家宝的な存在なのが当時のトライアンフ社のエンジニア、エドワード・ターナーが設計したスピードツインとボンネビルだ。その性能からフレーム、ルックス等、当時のオートバイの概念を打ち破った革命的なオートバイとして知られている。
和田さんの父親がスピード・ツインを手に入れた昭和30年代は個人所有のオートバイは高嶺の華。まして外車ともなれば限られた一部の人が所有する贅沢品だった。

「今で言ったらフェラーリを買う様な感じじゃないですか(笑)。うちの爺さんはクルマやバイクが好きで、その影響もあってか親父もバイクが好きだったんでしょう。だからうちは三代続いてオトキチ(注:昭和時代の猛烈なオートバイ愛好者)なんですよ(笑)。

当時の逗子・葉山は富裕層の人達の別荘があって、お得意さんのガレージに御主人が進駐軍の将校から譲って貰ったという、スピード・ツインがあったので、配達に行く度に眺めては『欲しいな、欲しいな』ってズッと言い続けてたら、そんなに欲しいんだったら、もう乗らないから持って行けって。相手の気が変わらないうちに自転車を放り投げて、配達そっちのけで不動車だったこいつを押して帰ってきたらしいですよ(笑)」↙︎
真剣な表情で作業台と向き合う。手慣れた仕草で旋盤を操り部品を作り出す
父から受け継ぐトライアンフ、ボンネビル(手前)とスピード・ツイン
どんな旧車でも、愛情次第で元気に

和田さんのガレージには、使い込まれた旋盤やバイスといった工作機械、多種多様な工具類から年代物のオリジナルパーツ、書物等、オートバイをよみがえらせるアイテムが詰め込まれている。

父親から引き継いだトライアンフはもちろんガレージにあるオートバイは、全て自分でメンテして今でも元気な走りを楽しませてもらっている。そのこだわりは「極力オリジナルな状態をキープする」こと。オリジナルを求めることで、「その時代のオートバイのメカニックな特徴や走り方など色んなことがわかってくる」と言う。そのために「当時のマニュアルや本を熟読し壊れた部品の細部を把握して、旋盤やフライス加工して造る」と徹底している。

その中でも思い入れがある一台が、ハーレーダビッドソンの軍用車WLAだ。WLAは戦地で使用するために造られた特殊車両だけあって、汎用型のハーレーとは全くの別物。第二次世界大戦を機に1930年代から造られていた従来型のハーレーに改良を加えて、ヨーロッパ戦線や西アフリカの戦場に大量投入されたオートバイなのだ。軍用車なのでガンホルスターや弾薬箱が装備されているのはもちろん、誰でも乗れるように注意書がタンクの上に貼ってあったり、キーレス仕様に。敵から目立たないようにライトも特殊仕様で、エンジンの保護と銃撃戦の時に防御になるように、厚みのあるアンダーガードが装着されている。軍用車だけに色々と工夫がされているが、エンジンはサイドバルブ750ccで造りはシンプルそのものだ。年式は古いが、大量生産されただけあって、オリジナルのパーツはまだまだ潤沢。気になるところがあれば、すぐにメンテできる。

このWLAと和田さんとの出会いも運命的だ。
「たまたま出かけて行ったオートバイのフリーマーケットで売りに出ていたんです。売り手と話しをしていると、これを売って77年型のハーレーのシャベルヘッドが欲しい、と。偶然、僕がそれを持っていて交換しようということで我が家にやって来たんですよ」
大戦時には戦火をくぐり抜け、今では和田さんのガレージを基地に年間200日週にして4回は元気に走り回っているWLA。なんともハッピーなバイクライフではないだろうか。

MY FAVORITE ROAD
「気が向いたらソロで三浦半島へのナイトツーリングをしますね。土日も仕事が多く、グループで走るとお互いに気を使うので…。WLAは買い物の足として普段から乗っていますよ」

>MAP(国道134号三浦半島付近)
タンクに打ち付けられた注意書き。これも軍用車の特徴の一つだ
西アフリカの砂漠の砂塵等、悪条件からエンジンを護るためのオイルバスエアーフィルター。フィルターボックスの下部にオイルが入っていて、吸収した埃をろ過し新鮮な空気をキャブレターに送り込む

OWNER'S PROFILE

和田大輔

1972年、神奈川県逗子市生まれ。
逗子の老舗鮮魚店、有限会社魚平商店三代目にしてソムリエ、きき酒師。オートバイ、マウンテンバイクの趣味の他、イノシシ罠猟(害獣駆除を目的に行政から許可証を得ている)とマルチに活動する。